参百 ページ27
ピリッと一瞬にして医務室、基、与謝野の雰囲気が怒気を孕んだものとなった。どうやら怒らせてしまったらしい、と変に冷静な分析を頭の片隅でしつつ、与謝野の言に大人しく従う。
女性と云うのは何が切欠で怒るのか今一良く把握出来ていない。が、ここ数日は与謝野と会っていないので直接何かしてしまった訳で無い事は確かである。
あーでもないこーでもないと一人頭を悩ます夏也。相変わらず寝起きの鈍い働きをする脳が挙げてくる候補は何だか違う気がしていた。
手にしていたボトルが行場のなくなる前に避難させ、本格的に考え込む。当てずっぽうで答えるしかないか、と一種の覚悟を決めた所で与謝野が口を開いた。
「……驚いた。こればっかりは太宰と中原に同情するね。先刻云ったろ、あと一歩遅かったらお陀仏だったって」
はぁと重い溜息。チラリと夏也にやる視線は何時になく鋭い。頼りなく視線を彷徨わせる彼は如何やら本気で分からないらしい。普段の聡明さは何処に行ったのだろうか。
付き合いが長そうな太宰が何も言わないので態々口を出す心算は無かったのだが、今回の件は流石に目に余る。武装探偵社員としてではなく、一人の医者として常から夏也には云いたい事があるのだ。
「……ええ、仰ってましたね」
上手く焦点が合わせられないのか、ぼんやりとした黒色を此方に向ける夏也がことりと首を傾げながら呟くように相槌をいれる。
その何処までも他人事な態度につい与謝野の手が出た。そんなに無い距離を一歩で詰め、グイッと思いっきり彼の胸倉を掴む。大きく息を吸って、放心する夏也に言葉をぶつけていく。
「周りがアンタを心配してるッて自覚をいい加減持ちな！ 仲間が怪我したら心配する、調子が悪そうなら気に掛ける。何でこんな簡単な事が分からないンだい？」
「……え……？」
茫洋としていた黒に驚きが混じる。驚いた訳。ゆっくり考えたらきっと夏也は答えに辿り着けたのだろうが、それよりも先に与謝野の声が降り注いできた。
「いいか、命を大事にしない奴はぶん殴る！ 妾は常々云ってるだろう!? アンタの犠牲で街の被害が少なかろうが此方の目覚めが悪いんだよ！」
「すみ、ません……」
「アンタはもっと命を大事に……否、自分に頓着しな。……でないと心配してくれる奴等に失礼だろう」
近い距離で発せられる押し殺しきれていない怒号を夏也は粛々と受け入れ、ただもう一度「済みません」とだけ返した。
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みゃあ(プロフ) - 狐猫音。さん» 度々のコメントありがとうございます！少しでも楽しんで頂けたのなら作者冥利に尽きます。お言葉の一つ一つが物凄く嬉しいです。読んで頂き、ありがとうございます。 (2018年12月26日 14時) (
レス) id: 9721615f06 (このIDを非表示/違反報告)
狐猫音。(プロフ) - 限定公開……！クリスマスは楽しいですね。番外編という最高のクリスマスプレゼントをありがとうございます。とても楽しんで読むことができました。これからも更新頑張ってください。 (2018年12月26日 12時) (レス) id: 1402817ddd (このIDを非表示/違反報告)
みゃあ(プロフ) - myuさん» 有り難いお言葉です……！展開に自信なかったので少し安心しました！更新頑張ります。 (2018年11月4日 11時) (レス) id: 9721615f06 (このIDを非表示/違反報告)
myu - とっても面白い作品です。更新頑張ってください (2018年11月3日 16時) (レス) id: fe06e07095 (このIDを非表示/違反報告)
みゃあ(プロフ) - ЯRさん» コメントありがとございます！そう言って頂けてとても嬉しいです。ありがとうございます！ (2018年8月8日 15時) (レス) id: 9721615f06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みゃあ | 作成日時：2018年4月30日 21時
