BALL16 ページ17
珍しく御幸に自分の名前で呼ばれて、少し驚く。
他のみんなも、まるで試合のように殺気立っているように見えた。
｢…私なにかしたっけ。｣と焦る。
少しの沈黙があり、一番最初に口を開いたのは郁也。
ぷっ…と顔を崩すと、｢あははは！｣と大爆笑した。
よくこんな状況で笑えんな…と心の中でフツフツ怒りを溜めながら、｢は…？｣という一言に怒りを詰める。
ひぃ…と腹を抱えて笑っている郁也に、呆れ驚く部員達。
・
笑いが納まったかと思えば、急にAの手をグイッと引く。
不意の事に体が郁也にもたれかかって、抱き寄せられる。
郁也は、｢ごめんね。｣と語尾にハートマークをつけて 部員達にウィンクをキメた。
途端にAの腕を引いて、食堂から連れ去る。
ドタバタと走りながら、｢ちょっ…郁也！何か誤解されて無い？！｣と聞くが、｢お前帰ったら頑張れよー｣と無責任なことを言う。
｢ふざけないでよ？！｣
郁｢多分あいつら俺の事Aの彼氏だと思ってるだろ。はー…面白い。｣
倉｢おいA！！｣
降｢どこ行くんですか…！｣
｢く、倉持…降谷…帰ったら！帰ったらちゃんと話すかっ…どわっ？！｣
郁｢ごめんなガキども。A借りるわ。｣
｢だからなんでそう誤解されるような言い方を…｣
結｢連れ去り…？｣
｢違いますから！！｣
食堂から出てきて大声で叫んでくる倉持や降谷。
途中でお姫様抱っこをされて、余計誤解が増えるだろう。
完全にこの兄貴はこの状況を楽しんでいる。
後で大変な思いをするのはAなのに。
そのまま校門まで走っていき、車に乗り込んだ。
｢…マジ覚えてろよクソ兄貴ｯ。｣
｢ははっ、頑張れよー野球部の不登校おヒメサマ♡｣
今日は存分に買い物する決意をした。
そう、なるべく高いものを。
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