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口説かれる彼女*11 ページ19

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「驚いたな…」


太宰幹部が呟くようにそう云った。私は、私が選んだ服のセンスが可笑しかったのだろうか。そう思い、謝罪の言葉を口にした。
なぜ幹部がそんなことを呟いたのかも気にせず。


「も、申し訳ございません…」
「なぜ謝るんだい?私は先刻、この服はきっと君に似合うだろうと思っていたのだよ。真逆、君がこの服を選ぶだなんて思わなかったから、つい口からもれてしまったのだよ」


太宰幹部はまるで壊れ物でも扱うかのような力加減で私の腰を自身の腕の中へと引き寄せた。太宰幹部の正面にある鏡に、手を取られた私が映っている。

太宰幹部は王子様のような笑顔で、私の体の上にその服を合わせた。黒色のワンピース。まるでマフィアの闇みたいだ。どこか遠くでそう思った。


「君によく似合う。そして君にもっとも似合わない、ポートマフィアの色だ」


本当、驚いた。
意思疎通しているかのように意見が合致する。


「君は私の部下だ。だけれど、君は私のようなやつの下についてはいけない人間だ」


どういうことだろう。そう思って、問いかけようと後ろを向く。彼はいつの間にか私から手を離していた。温もりが離れるのを感じる。

待って。

何故だろう。理由はきっと、なかった。
ただ衝動的だった。彼が私の前から消えてしまうのではないだろうか。そう思った。


「A?」
「ぁ…か、幹部。御無礼をお許しください……。ですが、幹部が…」


ああ。こんなにも簡単に触れてしまうのか。握った彼の手は確かに熱を持っていて、陽炎のような彼も生きている。存在しているのだと確かに確信した。

ポートマフィア幹部と会話をしたければ付き人をつけなければならない。いつ暗殺されるかわからないからだろう。
幹部は一介の構成員にとって、大統領のような存在でもある。自分たちとは違う世界に住む人間。


そんな人に、触れている。おこがましいだろうか。内部の人間が知れば、なんてやつだと罵るだろうか。


「A。無礼なんかじゃないよ。私は私だ。…今は私が幹部ということを忘れてやくれないかい?……それで、どうかしたのかな?」


幹部ということを忘れる。それは彼を一介の構成員のように扱えということなのだろうか。


「A。これは "命令" だよ」
「…はい。わかりました」


命令。不思議と、その言葉を聞くだけで落ち着きを取り戻せる。


「…どこにも、いかないでください」


だからだろうか。思っていたことがすっと、口から出た。

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- みじかい (2020年9月28日 1時) (レス) id: 049c48a071 (このIDを非表示/違反報告)
きみしにたもー - 弔藍さん» ありがとうございます!!!ありがたく承認させていただきました! (2017年11月14日 19時) (レス) id: 68b6b27599 (このIDを非表示/違反報告)
弔藍(プロフ) - きみしにたもーさん» 参加させていただきます。 (2017年11月14日 19時) (レス) id: cac47d7322 (このIDを非表示/違反報告)
弔藍(プロフ) - きみしにたもーさん» ありがとうございます。 (2017年11月14日 18時) (レス) id: cac47d7322 (このIDを非表示/違反報告)
きみしにたもー - そうでしたか、ありがとうございます。参加期限はありませんので、いいお返事お待ちしてます (2017年11月14日 18時) (レス) id: 68b6b27599 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はる x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tatsuka0822  
作成日時:2017年9月9日 19時

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