Crown【短編集】

気遣い:天月 ページ8

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　電車に乗って、ちょうど席が埋まってるくらいの人数。天月と2人、窓際に立つ。多分探せば席はあるけど、それなら立っててもいいかなっていうのが私たち。


　すん、と臭ったのはたばこ。…多分ヘビースモーカーが近くにいるんだと思う。体とか服に匂いが染み付いちゃってるんだろうなって感じの匂い。たばこが好きじゃない私からすればだいぶ嫌。でも、天月に車両変えよって言うのもなんだかなぁ…。わざわざそれだけのために、それは申し訳ない。電車だって数駅だし。

　｢A、どうかした？｣

　｢んー…、｣

　どうしようかなって思ってたらすぐに気づいてくれた天月に少し心躍らせてしまった。ごめんね、すぐに喜んじゃう。

　天月の耳に背伸びして口を近づけた。ヒール履いてても耳元は少し遠い。

　｢たばこの、においがね、するの。｣

　｢あー…｣

　んー、と少し考えたかと思えば天月とくるんと場所を交代させられる。

　｢ほんとだ。｣

　天月がすんと鼻を動かしてにおうね、と小声で話しかけてくる。さっきまで天月がたっていた場所は全然匂いがしない。


｢え、天月も好きじゃないでしょ、｣

｢まあ、好きじゃないけどAが困ってる方がやだし。｣

｢…ありがとう。｣

　にっこり笑ってくれる天月に申し訳なさと、少しの嬉しさ。あぁもう優しいなぁ。




場所交換。

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