Crown【短編集】

策士：センラ ページ21

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　会社の同期のセンラ。最寄り駅が同じだからタイミングが合えば一緒に帰ることもしばしば。夜遅くになれば家まで送ってくれる紳士ぶり。なんで彼女がいないのかホントに不思議。

　「A、どう？」

　「ん、帰れるよ。下で待ってて。」

　ちょうど仕事もきりがいいし、準備をして下で待ってくれているセンラの元へと急ぐ。

　「おまたせ…あれ、今日メガネじゃなかったっけ？」

　「あー、そうなんやけど壊してもうたんよ。」

　コンタクトとメガネでどちらも見たことあるけど、今日は朝からメガネだったからコンタクトにわざわざ変えるってこともないだろうし。…いつもメガネの日はずっとメガネだし。

　「え、じゃあ見えてるの？」

　「んー、ちょっと危ないかな。」

　「え、大丈夫なの。」

　全く見えないってほどではないと思うけど…ていうか、どうやって今日一日仕事乗りこえたんだ。ハイスペックすぎないか。

　「会社はなんとかなったんやけど、外は人多いから手つないでもええ？」

　「…いいよ。」

　これは、介護であって、それ以下でもそれ以上でもない。自分に言い聞かせて自分より大きくて骨ばった手と手を重ねる。…顔、赤いかな。でも見えてないか。

　

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