Crown【短編集】

ポジション：となりの坂田。　２ ページ14

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　意地でも仕事を定時で終わらせた。先輩がわざと仕事を押し付けようとしてきたけど、断った。Aの家に行かせやんとこうとしとるんまるわかり。

　入り口で待ち合わせて、電車に乗ればけっこうすぐにAの住むマンション。会社から近いのやっぱりええなぁ。俺も引っ越したいけど…お金無いしな。

　「おじゃましまーす、」

　「ちょっと散らかってるけど許してね。」

　Aの後ろをついていってリビングに入る。何度か入ったことのある部屋はいつもと変わらずキレイ。俺の部屋ももうちょい掃除せなな…。

　ちょっと待っててね、と言われソファに腰掛ける。…いつまでこんなポジションにおれるんやろ。たかが幼馴染。彼氏が出来たら俺はこんなポジションにはおられへん。

　「いややなぁ…。」

　「何が？」

　「な、なんでもない！！」

　オフィスカジュアルな恰好からラフな格好に着替えたAに声をかけられて、飛び上がるかと思うくらい驚いた。


　色々野菜を袋に入れてもらって、ついでに野菜が使える簡単なレシピも教えてもらう。俺でも作れそうなんばっか教えてくれる辺りよくわかられとる。

　「ほんとに、もらってくれてありがとね。」

　「こちらこそ。」

　玄関先で毎回野菜をもらったときにする挨拶を交わす。気付けば習慣の挨拶みたいになっとる。

　「あ、そうだ、さっき何が嫌って言ってたの？」

　「え、あ、っと…なんでもない。もうちょい待って。」

　「…？わかった。」

　ちゃんとこの気持ちを伝えられるような男になるまでもうちょっとだけ待って。ライバルは多いけど、せめてこのポジションで牽制だけはするから。もうちょっとだけ、彼氏の枠は空けといて。




　幼馴染のポジションから。

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