獄都商人 (ページ6)

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ごページ6

｢ふぅ。次は、抹本さんにあれを渡さないと…。あ、いや、その前に、部屋の鍵も貰ったし、先に荷物置いちゃおうかなぁ…｣

独り言をつぶやきながら、執務室の扉を閉じる。

独り言はいい。聞いてもらおうと思っている訳では無いものていう前提がある。だから、独り言は本心であるとみな思う。

私が今ボソボソと何かを呟いていたのは、もしかしたらそんな意図があったからかもしれない。目の前に見慣れた獄卒の制服があるのを見て思った。

｢あ、こんにちは、田噛さん、平腹さん。｣
｢おー、来てたのか、代々木!｣
｢…よお｣

橙と黄の瞳を持った彼らは、性格は正反対であるように見えるが、とても仲がいい(代々木フィルター)。それゆえいつも一緒にいる。

｢今、肋角さんに挨拶してきたところだったんです。お二人は、報告書ですか?｣

平腹の手にある(字の汚い)報告書(らしきもの)を見て、私は判断する。

｢この馬鹿が、提出するまえに2等分しやがったおかげで、再提出だ。まったく…｣
｢へへへ｣
｢なら、田噛さんが書けばいいのでは?｣
｢面倒臭い｣

ふふふ、とつい声が漏れてしまう。この2人は、相変わらずのようだ。

｢あ、そうだった。すみません、私、部屋に荷物置いてきちゃいますね。｣

くるりと彼らに背を向けると、｢おい｣と、田噛に声を掛けられる。

｢なんですか?｣

私は笑顔で振り返る。

｢…お前、肋角さんと何を話していた?｣

｢…。…挨拶と、商談ですよ。他に何を話せっていうんですか?｣

まずい。
一刻も早く、ここを離れたい。

｢そうか。｣

彼がそう言うが早いか私は｢じゃあ｣といってその場を離れた。

頭の良い奴、勘のいい奴、空気を読まない奴。
私は、それが苦手だ。