獄都商人 (ページ11)

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じゅうページ11

｢じゃあ、聞き込みはしとくからー｣
｢また、遠慮なくいらして下さいね〜｣

ルイとモモコさんに見送られ、私は新聞社を後にする。今度、もっと質のいいインクを売ってくれる先を紹介しよう。

新聞社から離れ、しばらく歩くと、徐々に辺りは閑散としてきた。
この近くに、団子少年朔夜から紹介してもらった喫茶店があるのである。私はまだ殆ど行ったことがないため、突然現れた正体不明の一般人が唐突に公務員である獄卒の行方を尋ねてくるというなにかの事件を想像させるような状況になりかねないが、朔夜の紹介のものだと言えば、多少は信頼してくれるだろう。先程から伝手に頼りすぎな気もするが、気にしない気にしない。

この喫茶店の主には妹がいるのだ。確か、しのぶといった。一回しか会ったことはないが、そう、目が奇麗だった。あとは、声。まるで鈴が鳴るような声。喫茶店の主とはあまり似ていなかった。血のつながりはないのだろうか。妖怪はまるで親兄弟の姿をコピーしたかのように似ていることも多いのだが。それか、父と母が似ていないのか。とりあえず、美しかった。多分、私が今までに出会ったあやかしの中で一番目が奇麗だった。うん。
しのぶの瞳と声帯に想いを馳せていると、もう扉は目の前だった。

鈴のぶら下がったガラス製の扉を開けようと手を取っ手に掛けたところで、後ろから、足音が近づいてくるのを感じた。規則的な足音。殺気は感じない。恐らく長靴。体重は重め。と、いうことは…

「たにｚ」
「やあ、代々木さん！斬島に会う前に会えてよかった！」

うん。私も、言い終える前にあなたが声をかけてくれてよかったと真剣に心から思います。名前を間違えなくてすみました。

「木舌さん！どうしたんですか？斬島さんって…連絡、ついたんですか！？」
「うん。そうなんだよ。くわしくは、あっちでいいかな？」

と、彼は公園のベンチもどきを指で指した。
…喫茶店に入らないあたり、他人に聞かれるわけにはいかない話なのだろうか。