時計の針が示す先【CS/派生作品】 (ページ26)

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「むぅ、本当に本当に残念だけど、今はまあ善いや！そうじゃなくてね、教えときたい事があったんだ」

「……『死の家の鼠』が、何か企んでるの？」

穏やかなクラシックが流れる店内。誰の目にも留まらない自然な動作で、ダーレスはにんまりと笑みを深めて囁いた。

「外部の組織を唆して、ポートマフィアにけしかけようとしてるみたいなんだ。まあ、ボクに情報が届いたって事は、フェージャが入れ知恵する程の重要案件じゃないだろうから、楽に消せるんじゃないかなぁ」

『死の家の鼠』がポートマフィアにちょっかいを掛けてくるのは、数ヶ月に一度ある事だ。大抵は外部の弱小組織を唆して武器市場や密輸ルートを荒らす程度のものだが、ごく偶にドストエフスキーが入れ知恵して綿密に練られた計画で以て邪魔してくる奴等がいる為、油断は出来ない。今回は前者の方らしいが、事前に情報があるのと無いのとでは大きな差がある。

「そっか……教えてくれて、有難う。で、態々対面で教えてくれたって事は、何か頼みでもあるの……？」

「うん！」

いっそ清々しい迄に打算がある事を認めたダーレスに、川端は鉄面皮を僅かに歪めた。
一体今度は何を要求されるのやら。前回は面白そうな玩具の提供だった。殲滅作戦の序でに揶揄い甲斐のありそうな人間を回収して届けるのに、どれだけ面倒を重ねたか。思い出すだけで溜息が漏れる。

「今回のは楽ちんなやつだよ。けしかけられた組織の殲滅、ボクも見たいなぁって、それだけだもん」

「…………」

「ふふふ、そんなに睨まないでよぉ！大丈夫っ
、ちゃあんと隠れてるからさ！」

川端としては、睨んだつもりは無いのだが。
咄嗟に何かを伝えようとした時、如何しても相手の目を凝視してしまう癖があるのだ。その所為で情報の伝達が上手くいかなかった事もある。中原には再三その癖を治せと云われているが、云われて治せるなら癖ではないと思うのだ。