23−仕立て ページ23
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この時間帯、卑しい姉二人は継母から歌のレッスンを受けている。
相変わらず二階奥の部屋では耳を塞ぎたくなるほど厭わしい彼女たちの声が聞こえる。
Aは継母から、レッスン中は邪魔をしないように言われていたが、今回だけは良いだろうと2回戸を叩いた。
「A、レッスン中は入るなとあれ程、」
「違うんです奥様、宮殿から号外なの」
「一体何?」
「王子の帰還で舞踏会を開くんです」
淡々とした彼女の報告に、姉二人は持っていた楽譜本を手から滑り落とす。
ジャーンッとピアノの不協和音が鳴るがお構いなしに慌てふためいて継母も立ち上がる。
そして突っ立ったままのAに気づいて面倒そうに指を刺した。
「ぼさっと突っ立ってないで、すぐに仕立て屋にドレスを3着作らせなさい」
「…! 優しいのね、ありがとうございます」
「…は? どういう意味?」
「私の分まで……」
嬉しそうに胸を押さえて微笑むAの発言に一瞬ピタリと動きを止めた彼女達は、それから突然吹き出した。
不思議そうにそれを見つめるA。
「自分の分だと思ってるのよ」
「勘違いして恥ずかしい子」
「え……?」
「まさか自分が王子に選ばれるとでも思ってるの?」
「いいえ、そんな事思ってません。約束したんです、友達と」
「友達ですって! どうせアンタの友達もみすぼらしくて舞踏会になんて行けないわよ」
彼女達は見えない友達を蔑んで笑う。
その友達は二人がお気に入りの善逸であるのはつゆも知らず。
「はっきり言っておくけど。1着はテオドラ、1着はエルフリーデ、もう1着は私よ
仕立て屋にドレスを作って貰えるなんて思わないことよ、使用人の分際で」
はっきりと 使用人と言われてしまった。
彼女こそがここの屋敷の正当な主であるのに。
慣れっこなのか、Aは諦めのため息を吐いて「はい、奥様…」と言うと、静かに退出した。
そして街へ出かけるのだ。仕立て屋にドレスを3着作ってもらうために。
「…作れないなら、自分で作ればいいのよ」
ぽつんと屋根裏部屋で地面に落ちた言葉。
彼女はまだ諦めていなかった。
_2週間後の舞踏会までに何とかドレスを完成させてみせる!
母の形見のピンクのドレスがあった為リメイクすれば間に合うだろうと、彼女は日々の家事をこなしながら必死に2週間ドレスを手縫いで繕った。
――そして、舞踏会当日_。
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えん - 実弥推しだったので、すごく嬉しいです!リクエストできるなら、白雪姫の夢主と王子の実弥、鬼滅キャラの七人の小人、見てみたいです! (2021年6月3日 20時) (レス) id: dfa45071da (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 実弥オオカミ!素敵です!リクエストしたいです!何だっけ?獣の子?の主人公を女にして師匠を実弥に、で恋物語に…それかオオカミ子供のアメとユキ?かジブリのハウルパロディ、もし叶うなら小芭内をお願いしたいです、玄弥、小芭内のお話ラブなのがなかなか無いので (2021年3月13日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
めあり - 鬼滅版シンデレラですね (2021年2月14日 4時) (レス) id: ca5a6634ce (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 湯海さん» 湯海様、最後までご愛読ありがとうございました!沢山うんうんと悩んだ結果の役ハメでしたので、そう言って頂けて努力した甲斐がありました…!この作品での実弥王子は本当にまっすぐでありながらもあざとかったですね……それすらも愛おしい(錯乱) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ayaさん» コメントに気付くのが遅くなってしまいました、すみません!aya様、こんな所にもコメント残して下さってたんですね…!ありがとうございます!aya様を幸せにする小説を作り上げることができて嬉しいです(^^) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年5月31日 17時