あなたはオオカミ 【不死川実弥】

22−帰還の速報 ページ22

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＿＿その後、何処を探しても、彼の姿は見当たらなかった。
代わりに森を捜索していた王都の騎士の人達が忙しそうに雨の滑りやすい森を馬で駆け回っていて。

その数人の騎士と出会したら、すごく驚いた様子で森を追い出されてしまった。


そして結局、いつもの日常に戻っていた。
私は、3度も大切な人を失う経験をしたんだ。
…少しぐらい、感傷に浸ってもいいでしょう。





リンゴン＿





「…誰だろう」





不意に鳴ったドアベルに、窓に頬杖ついていた手を下ろす。
あんまり気乗りしない足取りでドアを開けると、久しくぶりの善逸が「よっ」と手を上げた。





「…善逸、こんにちは。どうしたの？」

「どうした？ 何か元気ねーなー」

「…ちょっとね」

「まぁたオバサン達に虐められたの？
何で俺に相談しねぇんだよ、ガツンと言ってやるのに」

「ううん、そうじゃないの」





善逸が強く言ったって、きっとあの人達が変わらないって事は分かる。
…それに相談しても、彼が戻ってこないってことも。

しんとなった私を不思議に思った善逸が怪訝そうに眉を顰めたので、我に返って彼にここに来た理由を尋ねてみた。





「…そうだ、善逸、何か用事があったんじゃないの？」

「あ、忘れてた！ 俺、今日お使いで城下町に行ったんだけどさ！
宮殿の役人がもの凄い号外発表したんだよう！」

「号外？」

「消えた王子が、見つかったんだ！」

「ええ！？」





あの、柔らかな顔をした銀髪の美少年の…うそ！
まさか10年前に居なくなった人が本当に見つかるなんて…
王都の人は凄く有能な人がたくさん居るのね…。


柄にもなく声を上げてしまった。
だけど善逸も興奮気味に話しているから気にしていない様子だ。





「そして更に超ビッグニュース！
王子の帰還を祝して祝いの舞踏会が開かれるんだけどさ、その消えた王子自ら、貴族だけじゃ無く国民全員どんな階級の者でも参加可能にしてくれたんだって！」

「……うそっ！！」

「て事で俺たちも参加出来るんだよ、A！
ぜっったい来いよな、Aのドレス姿、めっちゃくちゃ楽しみにしてるから！」

「…わぁ…！」





傷心していた心も、そのワクワクするフレーズに少しだけ晴れる。
用件を伝え終えた善逸は、姉様達に見つからないようにさっさと帰るみたいだ。





「オバサン達には言わなくてもいいからなっ」

「あはは、それじゃズルよ」





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