あなたはオオカミ 【不死川実弥】

02−屋敷 ページ2

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此処はユグニール王国。自然と動物の国。
国の中心に王都があり、囲むように生い茂っている森。
森を抜けると東西南北に街が広がり、それぞれ辺境伯、公爵、伯爵、民衆の街と分かれている。


＿そして西の辺境の地エゼル。
ヴァリノール辺境伯は愛する妻を亡くし、大切な娘と二人で立派なお屋敷に住んでいたが、母親の居ない彼女を可哀想に思った辺境伯は、再婚をして継母(ままはは)と二人の同い年の姉妹が家族に加わった。





「良いかい、A…。何があっても勇気と優しさを忘れてはいけないよ」

「はい、お父様…」





商業の為暫く出稼ぎに出なければいけなくなってしまった辺境伯が、たった一人の愛する娘を抱きしめる。

継母と卑しい娘2人はお土産をせがんだが、Aはただ一人、父の道中肩に触れた小枝を欲しがった。
何故って、父がその枝を見るたびに、Aを思い出してくれるに違いないと思ったからだ。





「お父様、どうかご無事で…！」

「ああ、わたしの可愛いA。行ってくるよ」

「お父様、パラソルよ！」

「私のキャンドルを忘れないでね！」

「ああ。行ってくる」





手綱を引いて旅立ってしまうお父様。
その姿を、Aはいつまでも見送り続けたのだった＿。





「A」

「…はい、お母様」





屋敷の中に戻ると継母に呼ばれたA。
この屋敷は彼女達が来てから随分と賑やかになった。
＿無論、それは二人の姉達によるものだが。


父の出発を惜しみながら手を広げる継母の元へ近づくとそっと抱きしめてくれた。
抱擁の暖かさは母を思い出して切なくなるA。





「泣いているのね、A。またすぐ帰ってくるわ」

「ええ…わかっています」

「可哀想なA…だけどあの二人の方が可哀想ね」

「…？」





一体何の事か分からず今も向かいの部屋で騒がしく喧嘩をしている二人の姉の様子を伺うA。
首を傾げると整った継母の顔が歪んだ。





「あの子達は二人なのに1つの部屋を共有して…いつも泣いてるわ。誰かはこの豪勢な屋敷の一番大きな部屋を一人で使っているというのに。…いやね、貴方を悪く言ってるわけじゃないのよ」

「…ええ、わかってる。そうだ…それじゃ、私の部屋を使ったらどう？ 私は違う所に移るから」

「あら貴方って何て良い子なの？ それじゃそうするわ」





心優しいAは継母の胸の中で彼女に笑いかけた。





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