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孤児院の思い出は無い ページ9
「ウンウン、順調ですな。
この調子で行けば来月ちゃんと分娩ができるはずですよ。」
専門内の産科ではAはいつもイキイキしていた。
猫背なほど背中を丸めながらエコーを当てるAの目はキラキラしていて、時々映し出される胎児に“可愛い〜”と漏らしている。
「はは、先生赤ちゃん好きなんですね。ご結婚は？」
「私ですか？...縁すらないですねー。
東京にいた頃はモテたんですけどねぇ〜」
「あら、じゃあ頑張ってくださいね」
画面にキラキラとした表情を向けるAに嬉しそうに話しかける母親は、その後エコー写真を数枚もらって帰って行った。
診察室を出たAはグッと伸びをして無睡での二日目の業務に大きな欠伸を打つ。
「そろそろ昼か...」
「そうだね。鬼嶋は何食べる？」
「うーん、購買のおにぎりでいいかなぁ。
____って...
鴻鳥？！」
Aは思わず病院内で大きな声を出してしまい、急いで手で口を覆った。
Aの言う通り、そこにはお土産をたくさん持った鴻鳥が立っていたのだ。
「会いに来たよ。元気にしてた？」
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作者名：長官 | 作成日時：2020年5月3日 17時
