私のヘアメイクさん【JK】

大事にしたいもの ページ27

目を閉じて、再び開けた時。

彼らの世界が目を閉じる前より輝いているように。鏡に映った自分を見て、勇気を出せるように。魔法だって笑ってくれる彼らのことを、大事にしたい。


「俺、Aの手すごい好き」


眉を整えていると、私の手をホソクがいきなり掴んでくるものだからびっくりしてしまった。危うくホソクの眉が消え去るところだった。

「危ないから一声かけてから掴んで」
「ごめんごめん。でもなんか急に思ってさ」
「もー、気をつけてね」

メイクを再開させても、彼はなお先程の話題を口にしていた。ホソクは褒め上手だから照れてしまうのに、彼は容赦なく褒めてくれる。ニヤニヤしたくないのになあ。


「Aの手つきって優しいから。雰囲気とか性格も出るのかな」
「えへへ、嬉しい」
「ダメな男に引っかかんなよ。すぐ甘やかしそうで心配になる」
「……なんとも言えない」


鼻筋や目の下にハイライトを入れていき、光の様子なども見ながら調整する。

もともと鼻が高いからそこまで入れなくてもいいけれど、目の下は入れておいたら目が明るく見えるし映えるから綺麗に仕上げたい。

ダメな男、とホソクに言われて元彼の顔が浮かんだが、即座に消した。思い出すのはやめておこう。


「あ、今誰かのこと考えただろ」
「えっ、考えてない！」
「絶対考えた。なに、元彼？」
「エスパーなの？」
「ほら、やっぱり考えてるじゃん」


あ、と口を押さえてしまうと、ホソクは愉快そうに笑った。

今、彼氏がいるかと言われたらいらない。好きだと思っているのが世界のアイドルジョングクなわけだから、彼氏ができるわけもないのだけれど。

私はまだ彼らの夢のサポートをしたいし、彼らのためにいつでもどこでもメイク道具を持って飛びたいのだ。今がきっと、人生で一番楽しい。それはBTSのみんなと一緒に仕事ができているから。


私はこの場所にまだすがりついていたい。

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