顔を上げて、グク ページ26
「別に僕はヌナの優しさに漬け込もうだなんて思ってません」
私の手を握っていたジミンの腕を掴んで、ジョングクはキッと鋭い瞳で彼を見た。ジミンもすぅっと瞳から優しさの熱を引かせて、「あのね」といつもより低い声で呟いた。
休憩中だから別に仕事の邪魔になっているわけでもないから大丈夫だが、ジミンはチームのためにも怒っているのかもしれない。
「言い方変えたらヌナの優しさに甘えてるんじゃない、てこと。休憩中に遊ぶのはいいよ。でも、」
ジミンの親指がグクの目元に触れる。グクは目を細めることなくジミンのことをじっと見ていた。
「これは、ヌナの仕事を増やしただろ」
ぐ、と親指に力を入れたのか、グクも目をキュッとして、眉尻を下げた。真っ直ぐ横に結んでいた口は緩められ、視線も静かに下を向いた。
「ごめんなさい」
きっと、アイラインも綺麗に引けたから見て欲しくて、その一心だったのだろう。かまって欲しいとかそういうのではなくて。
そう思うと勝手に避けようとしていた自分が情けなくて、スポンジを持ってジョングクの頬に手を添えて顔を上げさせた。
私たちはアイドルを輝かせる仕事をしているはずだ。悲しい顔のままで居させるわけにはいかない。
「アイライン、難しいのに本当に綺麗に引けたね」
「ヌナ、」
「今度私にアイライン引いてくれる?」
声のトーンはあくまでいつもどおりでそう言うと、少しずつ目が細められ、ジョングクはやんわりと微笑んだ。
「はい」
「アイラインにも引き方の種類があってね、垂れ目に見せたりつり目に見せたりできるんだよ」
「今日の僕のは何目ですか?」
「……うさぎ目かな」
「それじゃあいつもと変わらないじゃないですか」
クスクスと笑いながら閉じられた瞳の上にスポンジを乗せた。目の際、まつ毛の間を埋めるように引かれたアイラインは本当に上手だ。
「ジミンもありがとうね」
「……Aヌナってすごいですね。空気を和ませる天才ですか?」
「なにそれ。ジミンの笑顔には敵わないよ」
そう言うとジミンはいつものように微笑んで、私もそんな彼に癒された。
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めぐみ(プロフ) - はぁ………とため息が出るほど、ちょっと目の奥が熱くなるような感覚を知るほどに素敵な作品でした、ありがとうございます(;;)みんなすごく心が優しくて、読んでいて私も優しい気持ちになりました。もし番外編など、浮かびましたらその時をまた楽しみにしています! (2022年3月15日 19時) (レス) @page43 id: 70e57b3fd4 (このIDを非表示/違反報告)
mii(プロフ) - 好きー (2021年8月18日 8時) (レス) id: d47eb74ff4 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - ひろさん» ありがとうございます! ラストはしりすぎたかな? とちょっと心配だったのでホッとしました( ˘ω˘ ) 続編は今のところ考えてないです( ; ; )すみません( ; ; ) 何か浮かべば番外編を書くかもなあというくらいで……コメントありがとうございました! (2019年12月19日 23時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - じゅりさん» ありがとうございます! 私自身続編系???となってましたがなんとかおさまりまして……笑 次の作品はかわいい控えめかもしれませんが、がんばります! (2019年12月19日 23時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - ラストの展開、キュンキュンしながら読ませていただきました!面白かったです!続編楽しみに待ってますね! (2019年12月19日 18時) (レス) id: 099739feed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちよ | 作成日時:2019年12月8日 16時