episode222 ページ29
「言ってたな。あいつらは二重人格なんだろうって」
解離性同一性障害。
病院に足を踏み入れることが、スイッチ。
先程悠馬にも聞かせた話を、西蔭さんはひどく慎重になぞり直しながら、恐る恐ると口を開く。
「小児期に受けた強い
「はい。恐らくは、交通事故に遭ったのが原因ではないでしょうか」
聞いた話と、見た事実。
辻褄を合わせるなら、それが普通だ。
「そしてふたりには解離性健忘が起きています。一星充くんの記憶も、一星光くんの記憶も、お互いには共有されていません」
一星充くんと、一星光くん。
だから、お互いに気付いていない。
支え合って生きているはずの兄弟の片割れが、本当は自分自身であることに。
自分が生み出した、もうひとつの人格であることに。
くしゃくしゃになったペーパーナプキンの星は、もう部屋主の手によって、端のゴミ箱の奥へと沈んでいる。
もうひとつの星。
綺麗に折られたままの星は、私の手元。
「とぼけたふりだとは、とても思えませんでした。それなりに動揺を誘ってもみましたが、人格にボロは出ず。……信用性はそれなりですよ、目と口だけは達者な私が保証します」
「それは…そう言われたら信頼しない訳じゃないが、正気なのか、あんたって奴は…」
(……動揺を誘うだけの為にあんな話を持ち出した訳じゃないけれど)
今の一星充くんを止められるのは、当事者である一星光くんだけだと思った。
一星充くんに私の言葉は、きっと届かない。それくらい、強く凝り固まった意志。
だから、助けてほしかった。一星光くんに。
(だって、あの時の由羽真くんを止められたのも、きっと私だけだったと思うから)
なんて、狡いことを考えたりして。
「はい、正気です。正気というか、これでも案外必死なんだと思います、私」
あの子は由羽真くんじゃない、あの子は私じゃない。痛いくらい分かっている。
でも、同じ後悔をさせたくない。そう思うことの、何が悪いっていうの。
「……俺にはまだ、判断はつかない。だが」
ぎゅっと噛み締めた唇を、見下ろしていた西蔭さん。
仕方なしに、というか、私にまともな倫理を説くことを諦めたように。
「元の人格を守る為にもう一つの人格が生まれると考えられるなら、現時点で弱い人格＿＿一星光が、一星充を作り出したといった方が自然なんじゃないか」
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三峰 契(プロフ) - かなりさん» コメントありがとうございます！のんびり更新ですが、これからも頑張ります！ (2020年10月9日 14時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
かなり - これからも体に気をつけて頑張って下さい！ずっと応援しています！！ (2020年10月4日 19時) (レス) id: 517f37b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - 続編おめでとうございます！私は、この小説が大好きでとてもドキドキする小説です！！私、野坂君が大好きなのでまだこの小説を続けて欲しいです！！ (2020年10月4日 19時) (レス) id: 517f37b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2020年10月1日 12時
