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リアル*5 ページ7

ゾンビの口元は真っ赤で、ところどころが腐敗していた。
喰われている人間は、すでに人の形はとどめていないほど。


「っ……。」


その光景に思わず後ろに後ずさりした瞬間だった。
倒れていた缶が足に当たりカランカランと高く響く音を立てた。


「ヴゥ……」


その音に反応するかのように、ゾンビがゆらりゆらりと立ち上がり、こちらをみた。
でも、左のゾンビは今までと少し違った。


「桐谷!別の方から回る…」

「待ってください…。きっと、あのゾンビ…地図、持ってます…!!!」

「は?なにいってんだよ!!なんでそんなこと…。」

「あの黒色の髪と小柄な容姿、ショルダーバック、首から下げられてるカメラ…。
この街が海外だとすれば、あのゾンビは日本人観光客の可能性が高いです…!!」

「よく…みてんなお前…。つーことは…倒さなきゃいけねーってことか…ッ…。」


徐々に2体のゾンビが距離を縮めてくる。
あるのは使ったこともないナイフとスタンガン。
痛みを伴わないといっても、恐怖はある。

それに…人をころしたことなんてない…!!


「ッ……。」


落ち着いて。
あれは人じゃない。人じゃない。人じゃない。
人じゃない。人じゃない。人じゃない。人じゃない。人じゃない。人じゃない。

これは、ただの“遊び“なんだから。

ただの自己暗示だった。
でも、そうでもしないと…身体は動かなかった。


「…武器をもって後からきても別に………ッ?!桐谷!!まて!!」

「ッ…。」


震える足を動かしていた。
ゾンビに向かって走っていた。

スタンガンのスイッチを入れて、強にする。


「くっ…!!」


唇を噛み締め、目をつむり、先に歩いてきたゾンビの顔面にスタンガンを当てた。


バリィ!!!!


「ッ……?!!!!」


ものすごい電撃が放たれる音に、私は腰を抜かして座ってしまった。
みれば目の前のゾンビは痙攣し、ゆっくりと後ろに倒れた。

黒く焼け焦げていた。


「ッ…あ…ぁ…私……。」


怖い。人を、殺した。
先ほどまでの自己暗示は、ただの気休めだったんだ。
人を殺したという恐怖で、手がふるえた。
カタンと手からスタンガンが落ちた。


「桐谷ッ!!!!!!」


不意に笠松先輩の必死な声が聞こえた。
涙をこぼしながら振り返れば、黒髪のゾンビが口を開け、私を喰おうとしていた。


「あっ……あ……。」


恐怖で動けない私は、ただ、喰われるのをみてるだけだった。

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作者名:ベイ | 作成日時:2017年3月28日 19時

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