「恋」っていうから「愛」に来た【鬼滅の刃】

善と我。 ページ7

我妻「ほんとに！離してくださらない！？」

『いや！よ！！！だってあなた！炭治郎の居場所知ってるでしょ！？』

我妻「教えるわけないでしょ！！」

黄色い羽織に必死にしがみつく女がいた

その小さな足で踏ん張って男を捉える

ここまできたら逃すものですか！

まるでそう言いたげな顔である

今日の朝の努力を泡にさせるか！

なんていう思いで心の中はいっぱいであった

一方、善逸は振り払おうと思えば振り払えるのだが

どうしても心が痛むものがあった

なんたって

我妻(可愛い音が彼女からする…それと気合が入っている服装だし…)

必死に頑張った努力が彼女には現れていたからだ

小さくて、雨に打たれたら落ちてしまいそうな

そんな紫陽花のような可憐さを持ち合わせている音がした

どき、どき、と炭治郎の名を口にするときに

高鳴っている彼女の心臓の音を聞くと

炭治郎に相当な恋心を抱いていることが身にしみてわかるのだ

たとえ、どんなワガママ娘だとしても

根は優しく、健気で、純情だということが

善逸の良心をくすぐってその場にとどめてしまう

我妻「わかる！？あんた、炭治郎に超嫌われてるの！！炭治郎、すっごい嫌がってんだからね！」

いやだ！離さない！と喚く彼女に向かって

善逸は冷たくも現実を話した

するとあろうことか想像を超えて

『え、あぅ』

我妻「え、ちょっとまって。なんでそんな傷ついた音をだすの」

ガラスが砕け散って床に散らばった音がしたものだから

善逸は怯んでしまった

きらきら、と反射するガラスは綺麗だろうが

その実触ってみれば

ちくりとして、そこから血がにじみ出る

そんなものを頭から被れば

どこもかしこもズキズキと痛んで涙を流すだろう

そして彼女の音もまさにその通りであった

ガラス片を頭からかぶったかのような音に

善逸でさえも心が締め付けられる

だが、場所を教えるわけにもいかない

どうしよう、と板挟みの中で思いつつ

善逸は彼女の手を掴もうとした

我妻「…とりあえず、場所をかえよ……って、えぇぇぇ！？！？ほっそ！！！！」

『そうよ！炭治郎に褒めてもらいたくて！痩せたのよ！』

我妻「これ、痩せたとかいうレベルのはないじゃないからね！？！？栄養失調！わかる！？」

『いいから！案内しなさいよ！変態！』

我妻「そういう場合じゃないから！」

変態でもないし！！

と、顔を歪ませつつ彼女の手を引いた善逸は

急いで甘味屋さんに駆け込むのであった

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