本気ではら .ましてやる。【鬼滅の刃】

ワガママ娘が頑張る話 ページ30

『いける！？いや、無理無理！！薄化粧だし！！炭治郎、今恋人連れてる！！』

「いけますよ！」

『いけないでしょ！！！』

これは今より少し前の話

ワガママな奥さんがやっと敬語を使えるようになったぐらいのお話です

『いやよ！！あんな炭治郎がデレデレの顔は見たくない！！』

「駄々をこねないで下さい！」

ある女が辛そうな顔をして声を荒げた

少ししょっぱすぎる恋の加減に

顔をおもわず、すぼめたようにみえた

彼女はあまりにも透き通る瞳をもっているが

そこに涼しさはなく

暑く蕩けるような恋の眼差しと

その先に移る失恋の姿に悲しさを覚えていた

『いった！！』

人通りの多いところで周りが見えていなかったら

誰かにぶつかるのは必然だ

想い人がほかの女に簪をおくっているのは

見ていて辛いものがある

ぐっと泣き出したいのを堪えるので必死だ

そんな中、大荷物を持っていた人と

ぶつかってしまい盛大な音をたてて

その荷物が落ちてしまった

彼女は一気に周りの目線の的になる

その中には炭治郎も含まれていた

『最悪よ！！』

涙腺がもう少しで壊れそうになる

視界の端にうつった炭治郎が

いつもどおり、冷たい目線をむけたものだから

おもわず大声を出してしまった

恋人にはあんなにデレデレするくせに

わたしには…

なんて考え出して。胸がきりりとなった

「すみません。お嬢様がぶつかってしまい…」

家政婦が血相を変えて地面に散らばった荷物を拾う

自分の裾が汚れるのを躊躇わず

地面にこびりつくまで腰を低くした家政婦に

お嬢様はなんと思ったのだろうか。

昔なら怒鳴り散らしていただろう状況だ

しかし、なんと自分も腰を低くして謝ったのだ

好きな人の前で、本当に本当に嫌だっただろうに。

惨めだと思われたくなかっただろうに。

『わ、私も拾うわ…いえ！拾います！！』

敬語を使うのはなんだか想像以上に恥ずかしかった

雨上がりで泥の飛ぶ地面に裾を付けるのも

心底嫌で、泣き出したかった

多分、もう泣き出していたかもしれない

心の中は荒れていた。

なんで私が！！と思いながら

それでも必死に手を動かした

『本当に………す、すみま…せん』

最後の荷物を渡した時

自尊心と戦いながら絞り出した謝罪は

かなり歪なものであった

プライドの高い彼女にとって

それは今までの人生の中で

もっとも耐え難い事であったのではなかろうか



次行きます！

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