今年もよろしく。 ページ47
Aが押す車椅子に乗った祖母ちゃんは「ごめんね」と繰り返す。
「良いって、祖母ちゃん!エマの着付けまでありがとよ!!」
毎年クリスマスに神社に参りに行く俺らだが、今年は年明けに入院を控えたAの祖母ちゃんを連れ初詣に訪れた。
祖母ちゃんを押すAに並ぶジイちゃん、続いて俺と万次郎とエマ、その後ろにワカとベンケーと黒龍の後輩たち。
圭介は恐らく間に合わない冬休みの宿題に忙しいらしく、Aが焼きそばを買って帰る約束を取り付け自宅待機させた。
「A!たい焼きあるぞ!!」
「ウチ、チョコバナナ食べたい!」
甘い物に目がない弟と妹は屋台に夢中だ。ワカはいつの間にか買ったらしいフランクフルトを手が塞がるAに食べさせ、棒を咥えている。さらっと間接キスをかますモテ男が憎い。
俺はじゃがバターを、ベンケーと後輩たちは焼きとうもろこしをツマミにビールを飲む。ジイちゃんは、甘酒の紙コップをAの祖母ちゃんに手渡した。
「Aちゃんの着物姿、何か貫禄ありますね!!」
後輩の一人が声を上げた。白地にカラフルな扇が描かれた華やかな着物を着るエマとは対照的に、Aのそれは黒地に八重菊が飾られたシンプルな物。
「演歌の花道っぽいよな」
「どっちかと言うと極妻じゃネ?」
傷みのないブロンドを夜会巻きにし、小学生らしくない色気を醸し出すAを見遣るワカとベンケーに頷く。
「日本舞踊の時は赤とかピンク、明るい色の絵羽を着せられていたからね」
祖母ちゃんはそう言い、車椅子を引く孫を振り返った。「曲によるけれど」と返すAはどこか照れ臭そうだ。
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作者名:カーター千之助 x他1人 | 作成日時:2023年5月6日 4時