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「真チャン、ベンケー。こっち寄って」
万次郎たちと別れ、シートに戻るなり俺らを労ってくれたワカだが、途端真剣な表情で俺らをすぐ近くに集めた。
「？どうした」
「始まる前に保護者たちが挨拶回ったりしてたろ。そん時もビデオ回してたンだけどさ」
言いながらカメラを操作するワカは、早送りで回したビデオを一時停止した。それは一見、複数の子どもたちがそれぞれに過ごしている場面だが……、
「……は？」
「ウン。この黄色いシャツのオッサン、Aだけ標的にさり気なくケツとか脚触ってた」
「俺らとマイキーがAから目逸らした隙に、か……。クソ！！」
「とりあえず証拠あるし、どう処分すっかは後。マイキーにも悟らンないよう、こいつ含めAの周り要注意で後の競技終わらせるしかなくネ」
ワカの言う通り、A本人の為にも今ここでそのセクハラ親父を叩き大事にするのは恐らく不正解。騒ぎになるどころか最悪運動会自体が中止になり得る。
万次郎が知れば俺らの制止も聞かず暴れ出すだろうし、何よりAの心を傷付けてしまい兼ねない。
一先ず証拠を残しつつ慎重にA周辺の様子を見よう、という形で纏った。いつの間にか起きていたジイちゃんもそれに頷く。
「で？真、次は何だ」
「あ……三年、エマの保護者参加の大玉転がしから一時間半の昼食休憩！ジイちゃん、俺行くわ」
「おう」
低学年のちびっ子たちのほっこりとしたダンスを見届けた時、三年生保護者を収集するアナウンスが鳴った。
「エマ、真くん頑張ってね！」
近くに来たAの声援を浴び(敵だけど)上機嫌な妹をフォローする形で赤い大玉を転がせば、四組中二位。上出来だろう。
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作者名：カーター千之助 x他1人 | 作成日時：2023年5月6日 4時
