第482話 望まれた日 ページ32
「あの時……霧野が俺に対して距離感を覚えていたのはわかっていたし、その事で俺も、アイツと正面を向かって話すのを、難しく感じていたんだ」
自分自身、共有している筈の記憶を持たない霧野や奈々に対して距離を感じてはいなかったと言ってしまうと、嘘になる。――最初は、全てに対して不安があったのだ。
問題があったのは、中世フランス時代へ向かった時の、霧野との関係性だけじゃない。記憶が無い彼女とどう向き合うべきなのか、何が最善なのか、散々考えた日もあった。
「それを、奈々が繋げてくれたんだろう? その時に俺は、例え記憶が無くなっても、奈々は奈々なんだって確信を持てたよ」
神童の悩みは、奈々の記憶の有無に対する理解と、霧野が記憶を取り戻した事により、今現在ほとんど解消されたと言っても過言ではない程だ。
いつだったか自分がタルトを口にして、無い筈の記憶を手繰り寄せたように、例え何があっても、いつも、心のどこかで確かに繋がる絆があるのだと知ったから。
きっかけを作ってくれたのは、他でもない奈々である。今彼女が感じている孤独感も、直に心配事ではなくなると神童は信じていた。
「それに、奈々だけじゃない。全ての人々が正しい歴史や記憶を取り戻す日は、もう近い。だから、大丈夫だ」
「……ん……うん。きっと、そうだね。ありがとう、拓人」
「良いさ、これくらい」
サッカーを消そうとする未来からの使者に対抗するために、当面の問題であった時空最強イレブンの集結も、実現の日は迫っている。
円堂大介が夢見た“時空最強イレブン”が、11人揃った時。それが奈々含め、大多数の人々が本来の記憶を取り戻す時なのだ。
斯く言い切った神童の言葉を噛みしめるように、ゆっくりと頷いた奈々は、彼から手渡された空のドリンクボトルを受け取りながら、礼を述べる。
彼女の顔に自然な笑みが戻った事を確認した神童は、特訓を再開するために選手達の輪の中へと戻って行く――そこへ声を掛けたのが、二人の様子を見ていた霧野だった。
「奈々の奴、何か悩んでいるのか?」
「ああ……」
「――それなら、今度は俺達二人で気にかけてやらなくっちゃな」
「ああ、そうだな」
霧野も、奈々の存在が自分達の絆を繋ぎ止めてくれていた事や、“三人”が自分達でなければならない意味を、理解している。
彼等の決意は、一つの未来へと収束しようとしていた。
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moeka(プロフ) - 続きの更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しく思います。楽しみに待ってます。 (2022年2月19日 9時) (
レス) id: e9f0e4b4b1 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの人 - 凄い久しぶりに見に来たけどやっぱ一気に見ちゃいますね！更新したかなー？ってぐらいでまた来ますね(●´▽`●) (2020年8月12日 21時) (レス) id: 7c87d58c6d (このIDを非表示/違反報告)
フェイル(プロフ) - 彩夏さん» お久しぶりです〜! いつもコメントいただけて嬉しいです! ありがとうございます! (2020年7月10日 23時) (レス) id: 9770b7b01c (このIDを非表示/違反報告)
彩夏(プロフ) - お久しぶりです！更新お疲れ様です！ (2020年7月10日 8時) (レス) id: e2a9603a24 (このIDを非表示/違反報告)
フェイル(プロフ) - かなりさん» またまたコメントありがとうございます〜! 大切に閲覧くださって本当に有難いです……。なかなか早く更新できなくて申し訳ありません;; 体調は大丈夫ですのでご心配なく! (2020年5月30日 22時) (レス) id: 9770b7b01c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フェイル | 作成日時：2019年9月14日 7時
