【イナGO】ヒスイ色の記憶の再失【ｸﾛﾉ･ｽﾄｰﾝ編】part11

第454話　攫い竜 ページ4

GKの西園がミキシマックスをしても、更なる失点を免れる事はできなかった。
試合再開から変わらず、秒単位で追加点を決めて来る敵チーム。

2失点を見た時点で、Aと鬼道は雷門イレブンの敗北を確信していた。


「…………無理だ、これでは……」

「想像以上だな」


前半が終了し、ハーフタイムを挟み、後半戦に入ろうが結果は変わらない。
思わずベンチから立ち上がったAが、お手上げと言わんばかりに首を横に振る。

彼女の声を聞いた鬼道も続いて立ち上がり
サングラス越しに、フィールドへ鋭い視線を送った。

確信された敗北――それは即ち、自分達がエルドラドから
再び何かを奪い去られるだろう事態を、予定調和だと認めたのと同じ。


「ここで試合終了! なんと、19対0ッ!!」

「負けた……完敗ぜよ」


GKもDFも機能しなければ、MFやFWも活躍の機会は与えられなかった。
雷門イレブンが疲労を覚える前に、失点を喫し、時間が過ぎ、試合終了を迎えたのだ。

勝敗は決した。相手側のベンチで怪しく笑みを浮かべた男が指示を送る。


「マインドコントロールモードだ、レイ･ルク!」

「…………! まずい!」


彼の指示の直後、レイ･ルクの懐からスフィアデバイスが取り出され、球体化した。

実行されるのはマインドコントロールモード。
相手はまたもや、松風達からサッカーへの思いを忘却させんとしている。


だが、同じ窮地を、いつまでも指を加えて見ているだけで居る筈がない。
Aと鬼道が、同時に手首に身に着けられた腕輪に手を触れようとした。

その時、シェルターの上に留まって試合展開を見守っていたトーブの父が
何かに呼びかけようとしているような、大きな鳴き声を上げる。


「な、なんじゃあ!?」


不自然な地響きが、片方のゴール側の更に向こうから伝ってきているのがわかる。
一同の意識がそちらに向けば、地平線で凄まじい砂埃が舞っているのを認めた。

一体何事か、錦がそう素っ頓狂な声を挙げるが、砂埃は見る見るうちに近づいて来る。
暫く凝視していれば、砂埃を発生させている原因は大群の恐竜であると判断が付いた。

恐竜たちはそのまま容赦なくサッカーコートに侵入すると、選手達を巻き添えにして
反対側のゴールを突っ切り、地の果てまで走り去って行ってしまう。


――砂埃が晴れた頃には、雷門イレブンの姿は一人も見当たらなくなっていた。



〜･〜･〜

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