温情 ページ11
時計塔から出てすぐに立ち寄ったところは、あのレストランだった。彼らは「自分達のせいで店に迷惑をかけちまった」と考え、そのことについて謝りに行こうとしていたのだ。
店の前、その店の主人と思われる若い男が道の落ち葉をホウキで掃いていた。レイたちに気がつき、視線を向けながらその手を止める。
「おや、先程の……?」
「その節は、ご迷惑をおかけしました」
レイは頭を深々と下げた。それに続き、クレアや魔王たちも頭を下げる。しかし、その店の主人は恐縮だとでも言うように掌を前に見せて、全力で左右に振る。
「そんなそんな、昨日はちょっと混乱したりとかあったけど……お店は壊れたりとかもしてないし、もし壊れていたとしても……弁償は向こうの人たちにさせていますよ」
微笑むように緩めている優男風の顔を、少しだけ強ばらせて話を続ける。
「僕、実はあの国の兵士に恋人を殺されて……それから友人、家族……次々に大切な人を……」
若者は辛そうに顔を沈ませる。ただ、その目にはレイたちに祈りを届けんと強く光る何かが宿っていた。
「僕は彼らにに屈しないという意味で、この街へとやって来たのです……
ぜひ食べていってください。朝ごはん食べてないですよね、それに昨日は全然食べられなかったでしょう?」
「……絶対に仇はとるよ。僕たちはそのために旅をしているんだ……今、そう強く思ったよ」
レイがそう呟くと、若者は顔を再び緩ませ、静かに彼らを店の中へと招き入れた。
そして広い店内、ひとつのテーブルに彼らは輪を作って座り、その目の前に昨日食べ損ねた料理を出された。
ずっとカルボナーラを食べたがっていた魔王は、満面の笑みを浮かべて皆の顔を見渡す。それを見てニャルは困惑しているともとれる笑みを浮かべる。
カレンは鶏肉のステーキを目の前に、全員の料理が出るよりも早く食べ始めていた。口の周りを思いきり汚して食べる姿は、純粋な子供そのものの顔をしていた。
レイは、しっかりとエネルギーを補給したいと考えてからか、栄養バランスの良いモーニングプレートなるものを頼んでいた。パンケーキにジャム、オレンジジュースとサラダ、野菜スープ……
これのどこが栄養バランスが良いのだか。
クレアは、大きめのマカロンを六つ頼んで、オレンジジュースを頼むだけだった。
「マカロンを作れるなんて、料理の腕がいいんだな」
若者は恐縮だというように肩をすぼめて「いえいえ」と頭を下げるだけだった。温かな時間が、その場にフッ……と流れていった。
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カレン - ありがとうございます、あんなクソ作品見ていただいてありがとうございます(二回目) (2018年9月29日 20時) (レス) id: 54cd55ba5b (このIDを非表示/違反報告)
デ・ロイテル(プロフ) - カレンさん» カレンさんお久しぶりです。カレンさん良かったです(ごいりょく) (2018年9月26日 0時) (レス) id: 707fc28c68 (このIDを非表示/違反報告)
カレン - おっと作家名のままだった、失礼 (2018年9月25日 18時) (レス) id: 54cd55ba5b (このIDを非表示/違反報告)
キリサメさん - カレンは圧倒的裏ボス的なイメージで考えたキャラなので、能力考えるのにかなり時間が... (2018年9月25日 18時) (レス) id: 54cd55ba5b (このIDを非表示/違反報告)
Olivie(オリヴィエ)(プロフ) - カレンさん» 良かった〜、間違ってたらどうしようかと思ってたんだ!ネーミングから参考にさせていただきますた。 (2018年9月24日 22時) (レス) id: 26b767d003 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Olivie x他1人 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/olivie_with_Riv
作成日時:2018年9月23日 0時