【ツルネ】ハバタケ 〜The Lost Memory〜

13.練習談今昔 ページ14

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しばらくお喋りしていると、


｢あ、ねえねえ、Aちゃん私のこと呼び捨てでいいよ！｣


ゆうなちゃんが突然そう言いだした。


｢それともニックネームにする？ どっちでも大歓迎だよ〜｣

｢あ、じゃあ……ゆ、ゆうちゃん、とか？｣

｢あっ、それ良い！ 何なら『ユウ』で良いよ！｣


ゆうちゃんがまた人懐こい笑顔を見せる。なにこれ、可愛い羨ましい。


｢ところで、Aは弓道部に入るの？｣

｢あっ、それ私も気になってた！｣


梨可とゆうちゃんが、少し期待混じりの目で私を振り向いた。


｢あー、練習メニュー見て決めようかなって。
ランニングとか筋トレとかしないと体力落ちちゃうでしょ？ そういうのがある所を探してて、最初に来たのがここなの｣


｢じゃあ練習の最初に入れようよ！｣

｢っ……！｣


後ろで大きな声がして、私はその場で飛び上がる。振り向くと、半泣きで手を合わせる山之内くん。


｢あ、山之内くん……｣

｢瀬戸名さん、ごめん、驚かせちゃって……｣


なんだか垂れた犬の耳のエフェクトが似合う気がして、つい笑ってしまう。


｢だ、大丈夫。大きな音には何でもびっくりするから、山之内くんは悪くないよ。それよりも、先生が黒板消しとか落とした方が……｣

｢あー、あれうるさいもんね。おれ授業中寝ちゃって、毎回あれで起こされてるし｣


｢いや遼平、授業中そもそも寝るなよ……｣

｢あ、鳴宮くん……｣


山之内くんのさらに後ろから、鳴宮くんが顔を出した。
鳴宮くん、入部したんだ。何か心境の変化があったのかな。



｢で、練習のどこでランニングと筋トレ入れる？最初にまとめてやっちゃうとか？｣

｢あ、あの、私、週に1回とか、月水金の3回とかでもいいと思う……。その代わり、ちょっとハードにするの。そうすれば他の日は弓道に集中できるから……｣




｢良いんじゃないかな｣


さらに男子の声が加わる。


｢……竹早くん｣

｢ランニングと筋トレ。ランニングは特に、精神も鍛えられるそうだからね。
ところで瀬戸名さん、中学では何部だったの？｣


悪意ゼロの笑顔で聞かれて、私は少し俯いた。


｢私は……


……卓球、です。
あのっ、卓球って、楽でしょとか言われるけど全然だからね！」


卓球＝楽な学校もあるかもしれないけれど、顧問によってそこは完全に変わってくる。ただ、私の所は顧問がやたら厳しかったから、卓球部＝楽であるという考えを持って来られるのは大嫌いなのだ。
一度言葉が口から転がり出始めると、怒涛の勢いで押し寄せた本音は、そのまま底なしに流れ出していった。

14.恐怖心→←12.初めまして

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今日の弓道男子

如月七緒

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