【ツルネ】ハバタケ 〜The Lost Memory〜

12.初めまして ページ13

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｢はい、えっと、私、今日は見学に来ました。よろしく、お願いします｣


へえ、如月くんと小野木くんって言うのか。覚えておこう。
なんだか如月くんって、すごく話しやすい。人見知りの私でもつっかえる事なく言葉が出てくる。


｢うん、Aちゃんヨロシク！ ほら、入って入って！｣


ひゃ、名前で呼ばれた……！
小学校卒業以来は無かった経験にドキッとしつつ、押されるがままに、中に入る。

すると、


｢A!?｣

｢梨可！｣


準備をする梨可がいた。その隣にはあと2人、見知らぬ女子。


｢この方がAさんですの？｣

｢うん、そうだよ｣

｢妹尾から聞いてるよ〜！ 来てくれたんだね、嬉しいっ！｣


ポニテでお嬢様口調の子と、髪を両耳の下で結んだ背の低い子が駆け寄ってきた。
後ろから、如月くんがひょいとこっちを覗く。


｢なになに？ 皆、Aちゃんと知り合い？｣

｢ん、梨可とは入学式で席が隣だったんです。苗字が『せお』と『せとな』だから｣

｢お〜、なるほど｣


後ろから、如月くんが頷く。と、急に｢あっ！｣と叫んで、


｢着替えてこないと！ ごめんね、オレ時間やばいから行くけど、うちの女子は超いい子揃いだから。きっと仲良くなれると思うよ！｣



……え、行っちゃった。
とりあえず、梨可たちと話せないかな。

梨可を含めて、女子はみんな袴姿だった。かっこいいなあ、なんて思いつつ、梨可に声を掛ける。


｢その2人が女子部員？｣

｢うん、そうだよ。2人とも経験者｣

｢未経験の人はいない感じ？｣


｢うん。……彼らはいろいろあったようだけど、全員やめていったらしい｣


ぜ、全員……。


｢それより、うちの部員を紹介するよ。この子が白菊乃愛｣

｢Aさん、ですわね。初めまして。貴女のお話は妹尾からよく聞いていますわ。本日は見学ですの？｣


お嬢様口調の方の子が、穏やかな笑顔で挨拶する。


｢うん、見学。の、乃愛ちゃん、よろしくお願いします｣


乃愛ちゃんは｢よろしくお願いしますわ｣と綺麗なお辞儀を返してくれた。


｢で、この子が花沢ゆうな｣

｢花沢ゆうなです。好きに呼んでくれていいよ！ 未経験者だよね？ よかったら何でも聞いてね〜｣


ふわふわしたお下げの子が、｢よろしく〜｣って言ってにっこり笑った。


ゆうなちゃんだけじゃなく、梨可も、乃愛ちゃんも、この部活はみんな優しい人ばかりのようだ。私以外は全員経験者だってことは、きっと私がずば抜けて下手だから何か言われる、みたいなことも無さそうだし。






だからきっと、あのときの───みたいなことは、無いよね。

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今日の弓道男子

如月七緒

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