86.聞いてたよ ページ40
･
私は、生徒会室のドアをぶち破る勢いで開け、蹴っ飛ばす勢いで閉めた。その反作用がごとく、苛立ちに任せて床を蹴る。
｢なんで、あんなっ……！｣
｢おわっ!?｣
｢うぎぇっ!?｣
走りだそうとした瞬間に、目の前にいた誰かにようやく気付く。ぶつかりかけて何とか踏みとどまるが……女子力の欠片もない悲鳴が出た。
顔を上げると、目の前にいたのは、
｢あ、ま〜くん………えと、ご、ごめんなさい……｣
｢おう……こちらこそ、悪い……｣
お互いとりあえず、まずはぶつかりかけたことを謝る。
だがそれ以降、話の継ぎ目が見当たらない。どう言葉を続ければいいのかわからない間に、そのまま会話は寸断されてしまった。
無言の時間が流れる。
−−−−
先に口を開いたのは、ま〜くんだった。
｢その、A……ありがとな｣
私は何と返したらいいのかわからず、スカートを握ったり放したり、視線をさまよわせたりしていたが、やっとのことで、一言だけ呟いた。
｢……何が｣
｢『Trickstar』のために怒ってくれただろ、さっき。
ドアの外から、聞いてた。
……俺さ、やっぱ怖くてなかなか生徒会室に入れなくて。だから、外回りの仕事ばっか引き受けてたんだ｣
……ああ、呼び出した割にいなかったのって、そういう理由なの。
わからなくもないけど。
｢もう学院中の誰も、逆らう勇気なんて無いんだよな、会長には。
なのにおまえは、そんな会長にもちゃんと正面からぶつかって、怒ってくれた。
……卑怯な奇襲作戦でも取らなきゃ勝てなかった、
私には、わかってしまった。
今、ま〜くん、明らかに悲しくなった。声の調子から、その寂しそうな笑顔から、私にはわかる。
なのに、肝心なときに、言葉はうまく働かない。
｢……別に。
あんた達『5人』はさ、もう立派に遠くの空で輝くお星さまだよ。私のことなんて忘れた方が、輝ける｣
ま〜くんの顔が、どうしても見られない。
｢どうか地に落ちてきたりしないで。皆の期待を裏切らないでね、……私にはもう、助けられないから｣
ま〜くんが、息を呑む。
――駄目だ、私が喋るといつもロクな事がないや。
僅かに自分への嘲笑を浮かべて両手のひらで目を押さえ、ま〜くんの横をすり抜ける。
ごめんね、私は上手く喋れない。
心に巣くう、このよくわからない気持ちを、上手く言葉にできないんだ。
｢――ごめんね、無能で｣
−−−−
とりあえず、教室戻ろう。
そう思ったのが、間違いだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 218人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Mashiro Lio(プロフ) - もむさん» ありがとうございます。ご指摘に従い修正いたしました。43ページの方はわざとでしたが、誤解される可能性もあると気付いたため、誤解されにくい表現に変えました。 (2020年3月26日 8時) (
レス) id: 6d83265bc4 (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - 読むのが遅くて申し訳ない><イラストの方つつがなく進行させて頂きます。返信はいつでも構いませんし、して頂かなくとも結構です（イラストはいつでもコメ頂けると嬉しい！）後半飲み込まれて見落としないか不安ですが…ご依頼ありがとうございました！ (2020年3月22日 4時) (レス) id: e07fd37919 (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - 3まで読了済み。6ページ 27段目 は入ると→入ると 43ページ 4段目 声は発する→声を発する わざとな気がしますし、厳しめと言われたので一応！ 3も読み終えて、事情を把握しております。3は誤字脱字無かったです！！ (2020年3月22日 4時) (レス) id: e07fd37919 (このIDを非表示/違反報告)
Mashiro Lio(プロフ) - *.ﾟLucifer★of★Princess*.ﾟさん» コメントありがとうございます！そこのシーン絶対に書きたい！と思っていた所なので、キュンキュンしていただけて嬉しいです！これからも頑張りますので、よろしくお願いします！ (2020年3月2日 14時) (レス) id: 088a429c13 (このIDを非表示/違反報告)
*.ﾟLucifer★of★Princess*.ﾟ - いつも、楽しく読ませてもらってます！りっちゃんと桃李くんに取り合われちゃう展開が、すごくキュンキュンしました(///ω///) 続きも楽しみにしてます(≧∀≦) (2020年3月2日 13時) (レス) id: 60e3b9a68e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Mashiro Lio | 作者ホームページ：http
作成日時：2019年11月5日 19時
