さよなら、Dayflower【あんスタ】

57.一難は去って、回帰する。 ページ10

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2人は、やはり遊木くんを心配して待っていた。


安心した男子2人は｢泊まり込みで練習だ！｣って言い出して。すると、あんずまで｢わ、私も泊まります｣って言って。気が緩んだ私も｢帰らない｣って喚いてみたら、笑われた。


話を聞くに、遊木くんも親が苦手だとか。事情は知らないが、なんかシンパシー。

結局、女子組お泊まりは却下。ま〜くんが必要なものを取りに帰るついでに、私とあんずを送ることになった。


｢んぐあ〜、でもやっぱ帰るの嫌〜っ！｣


｢勉強とか嫌〜！｣くらいのノリの私に、なぜか、あんずがぎょっとする。


……なぜぎょっとする？

首を傾げた、そのとき。









｢ゆうくん｣


指先が凍りつく、声。

冷え冷えとした眼光をたたえたその人――泉先輩が、そこに立っていた。




−−−−




先輩、どうして……。


私と、あんず達を先輩は一瞥する。その眼光に、あんずはひっと声を上げてま〜くんにしがみついた。


｢い、泉せんぱ……みゃっ!?｣


先輩は突然、私の手首を掴んだ。痛い。


｢A……さっきはよくも、ゆうくんとの時間を邪魔してくれたよねぇ｣

｢れ、練習を円滑に進めただけです私は！ 先程のは逆に練習妨害でしょう。先輩も妨害はお嫌いで………痛い痛い痛いやめて！｣


左肩と右手首を強く握り締められて、私は悲鳴を上げた。どちらも筋肉が少なく、骨に直接力がかかって痛いのだ。


｢おいあんた、Aに何すんだよ！ てかここは『Trickstar』の貸し切りだぞ、関係者以外は立ち入り禁止！｣


ま〜くんが、あんずを背に庇いながら先輩を注意･牽制するが、


｢あんたに話しかけてんじゃないんだよねぇ、引っ込んでてくれるぅ？｣


先輩は、迷惑そうに眉をひそめる。


｢ていうか敬語で喋ってくれないかなぁ、後輩くん。生意気な子は、この夢ノ咲学院じゃ生きていけないよ〜？








プチッて踏みつぶされたいのかなぁ、虫けら♪｣




――は？



今、この人なんつった？



『虫けら』？


それが人間を相手にする態度なの？


この瞬間、私は悟った。



もう、この人は……私の――。





｢……では泉先輩。私から申し上げましょう。この練習室は、｣

｢はいはい、そこの後輩くんが言ってくれたから知ってるし｣

｢では、立ち入らないでいただきたいです、ねッ！｣


言うと同時に左腕を振り上げ、肩にかかった手を外す。右手首に反対の手を添え、全体重をかけて拘束を振り解くと、後ろに飛び退いた。遊木くんを背に庇って立ち、右足だけ1歩引いて組手の左構えをとる。

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