さよなら、Dayflower【あんスタ】

55.わからぬ / 心配事 ページ8

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ところで、あんずさん。

あなたジャージの上からエプロンする意味ある？ 料理や実験や調合じゃないのに三角巾の意味は？ つか腕まくりしてるなら別に半袖で良くない？


……指摘する勇気は無いけど。




−−−−




｢うし、休憩すっか。A、夜食買ってくる！｣


ま〜くんがお財布片手に部屋を出る。もう下校時刻を過ぎていて、明星くんと氷鷹くんは帰宅したあとだ。


｢いってら！ よし、あんずGO！｣

｢だねっ、定期お掃除の時間！｣


私たちはそろって気合を入れる。みんなの休憩中は、部屋の掃除をするのだ。
なにせ、練習すれば汗やら垢やら埃やらが飛び散るし、髪やほつれた糸も落ちる。場合によっては食事すらここでする。

おかげで私達は趣味ってくらいお掃除をしなきゃならないのだ。


｢……ところでさ、真くん帰ってこないね｣


床をモップで磨きながら、あんずがぽつりと呟く。


｢確かに。私ちょっと見に行くかなあ｣

｢でも外、暗いよ。危なくない？ それに衣装作りも……｣


あんずは、部屋の隅に積まれた布の山を見やる。
鬼龍先輩にいろいろ教わったらしいが、なにしろ技術がまだまだ未熟。なので、私もサポート要員に入っている。


え、私に縫製ができるかって？
設計図通りに作るのは大得意ですとも。中学の家庭科はどの成績表も最高評価だし。偏差値70のK高でさえ昨年の学年末テストは94点、学年3位。実技ももちろん最高評価だ。
小4のときなんて、自由研究が面倒だったから母に教わって、ワンピース1着作って終わらせたし。


だから衣装作りくらい緊急の問題ではない。それに……


｢危ない？ 大丈夫！ 私、鉄虎くんレベルまでなら普通に勝てるから！｣


道着じゃないけど、動きやすいし平気！と親指を立てる。あ、ちなみに鬼龍先輩レベルは無理。あれは、有段者は有段者でも、全国検定の厳しいやつ取れるよ。



……という訳で、あんずに心配そうな顔をされながら、私は遊木くん探しに出かけたのだった。




−−−−




｢遊木く〜ん、どこ〜？｣


学院内のランニングコースを、逆向きにたどる。
ていうかこの学院、広すぎ！ 敷地内のランニングコースとか、K高の外周より長いんだもん。尋常じゃない。


｢遊木く〜……あれ？｣


グラウンドに面した廊下に、人の姿が見えた。誰だろ……って、遊木くんじゃん！
その横には、瀬n……じゃなかった、泉先輩がいるようだ。いつも不機嫌な先輩には珍しく、楽しそう。


まさかのサボり……？
いや、遊木くんに限ってまさかね。



とりあえず、急ごう。

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