さよなら、Dayflower【あんスタ】

74.どうしようもない ページ27

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｢なッ、んてことしてくれてんだよあいつらぁ……!!｣


うっかり大声を出しかけて、何とか耐える。代わりに床を殴って、やり場のない怒りを無理やりぶつけた。


……本当は、｢何であんずだけが｣｢何で私じゃないの｣という思いも、あった。怒りはなかなか収まらず、かといって観客らの前で暴れ出す訳にもいかない。
仕方がないから、親指の付け根を思いきり噛む。何かを強く噛んだことと、指に走る痛みで、威嚇する猫のようだった私は、なんとか冷静さを取り戻した。



もう、あんずは明星くんの手を取ってしまった。今から走ったとて、間に合わない。

かといって、あいつらに全責任を負わせるわけにもいかないし……あぁもう、面倒事ばっかり持ち込みやがって『Trickstar』め!! 私いったいどうすればいいの!?



頭を抱えてひとしきり葛藤した私は、疲弊しきって脱力する。



……はあ。
もう、難しいこと考えるのやめよ。

あんずが舞台に上がってしまったため、今さら私にはどうしようもない。それより、終わったら4人に｢今回の件によって発生するリスク｣についてたっぷり言って聞かせて、再発防止策を立てて……あとは対症療法するしかないな。


たいへん不本意だけども……これから忙しくなりそうだ。




−−−−




……あんずが衆人環視にさらされるという、考えうる中でも最悪の事態が発生した。それだけでも、私には信じがたい。
なのに、加えて明星くんは


｢みんなにも紹介するね〜！ こいつが、俺たちの『プロデューサー』だよ☆｣


なんて言い出したのだ。

――お願い、この事態を拡大するような真似はやめて。私の存在をかき消すような真似はやめて。


｢これまで『男性アイドルの育成』に特化していた夢ノ咲学院で、初めての試みとなる『プロデュース科』の第1号！ 俺たちを陰に日向に支えてくれた、功労者だよ！｣


『第1号』って。
私だって第1号なのに、まるで、あんずしかいないみたいじゃん。

そもそも、あんずはプロデューサーらしいことなんて何にもしていないのに！


｢うむ。彼女がいたから、俺たちはここまで高く駆け上がることができた。俺たちが天の頂で輝くアイドルの星になれたなら、それは彼女のおかげだ｣


氷鷹くんまで……。
まるで、私はなんにもお手伝いしてない、みたいな言い方だ。


――ああ、そっか。
彼らの頭の中には、あんずしかいない。
だから『Trickstar』を支え導くのは、私じゃいけない。それができるのは、あんずしかいないんだ。



きっと、ま〜くんも……。

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