カラオケ ページ44
いざ入ろうとすると、笑い声が聞こえてきた。
いや、嘲笑うような声じゃない。
ただ、楽しんでいるような声だ。
でも、それでも。
開けようとする手は震えた。
「…Aおねーちゃん？」
ゆうの声ではっと我にかえる。
「…ごめん、入ろうか」
一旦できたグループの中に入るのは勇気がいる。
がちゃり、とドアノブを回し中に入った。
途端、誰かに突進された。
「ゔっ！？」
「A様ー！」
「待って待って苦しい苦しい」
力強めないで骨折れそう。
しかも勢いで後ろに倒れた。
「…いって…」
「大丈夫か？」
「大丈夫大丈夫…」
「真昼おにーちゃん！」
「A遅いよー！帰ったかと思った！」
「約束は守るタチだっての…」
立ち上がって、真昼の隣に座る。
「…衣玖乃ちゃん、膝の上に乗らないで」
「ゆう君ならいいのにですか！」
「子供と女の子の体重は違うからな」
しぶしぶ降りた。
いや、何故しぶしぶ。
「A！一緒に歌おう！
『ロンリーエネミー』！」
「それか。お前知ってたのな」
「Aの聞いてる奴は全部聞いたから！」
そうか。まあいいか。
マイクを受け取る。
「「〜〜♪」」
これ以外と好きなんだよなー。
全体的に好き。どこが好きって言われたら全部好き。
曲が終わると、衣玖乃ちゃんが抱きついてきた。
「毎回抱きつくのやめて！？」
「素晴らしかったです！」
「そ、それはありがとう…」
歌う順番が来たので歌います。
『愛き夜道』だって。
ラップのところは並柳で、メインは衣玖乃ちゃん。
もう一つのパートが私。
終了。
皆歌うまいね。すごいな。
そのあとはゆうが意外なボカロを歌ったりして終わりました。
お会計は私です。
高校生は結構安かった。高校生お得だね。
解散して、家に帰ると音葉が先に帰っていた。
ゆうがボカロ歌ってたよ、可愛かったよ、などと言うと、行けばよかった！と後悔してた。
今日までは、平和だった。
文字通りの、平和。
皆と笑って、歌って、話して。
楽しかった。
でも、それが崩れたのは翌日。
翌日、学校が終わって、真昼達が遊びに来た。
その時だ。
「衣玖乃ちゃん、ちょっとこっち来て」
「？はい！」
私が衣玖乃ちゃんを誘って、リビングの前の部屋に入った。
言いたい事と、聞きたいことがあったからだ。
部屋のドアを閉めた時から、平和は崩れた。
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作者名：リリムゥ | 作成日時：2018年1月26日 18時
