陰陽師～刀剣ノ巻～

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平安時代、それは鬼と人間が共に暮らしていた時代だ。

これはその時代に生まれたある心無き少女の話。

月夜の中をゴトンゴトンと進む牛車が一つ。

安倍晴明のもとへ行こうとしている

源博雅の物だ。

博雅「いるかな、晴明…。」

一条戻橋の上を通った時に博雅は呟いた。

その時、従者のヒッ、という悲鳴が聞こえた。

何事かと思い、御簾の隙間から覗けば

そこには…

月光に照らされ、這うようにして四つん這いになっている白髪の老婆が居た。

牛目当てなのか、人目当てなのか。

老婆は博雅が見ていることに気がつくと

ニタァッ、と笑い、

より一層カサカサと近づいてきた。

博雅は驚きと恐怖で体が震えて動けなかった。

もう少し、もう少しで晴明の屋敷だ……。

老婆は尚も近づき、従者の一人に手を伸ばした。

すると、シャラン…と美しい鈴の音がし、

14、5の美しい少女がスッと老婆の前に降り立った。

少女は牛車を執拗に追いかけていた老婆を斬り捨てると、

「思い出せない……。」

と呟くとスゥッと消えた。

キラキラキラ、とまるで音がしそうなほどに美しい月光が地に降りていた。執筆状態：連載中