【文スト】もしも君が居たのなら一章 (ページ37)

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三十五悪い兆しページ37

『太宰さん仕事して…此の儘だと異能力の名の通りの人だよ…』

執務室で、買った縄を選別する太宰さんに私は一声をかける。

｢ぇ人間失格って事？流石に酷いなー…泣いちゃうよ私｣

しくしくと自分で擬音をつける太宰さんの姿は子犬だ…

『子犬…｢やめて犬で例えないで｣』

｢そうだ…面白い人に出会ったのだよ！安吾と織田作と云ってね…殺さずのマフィアと云う面白い人なんだよ！｣

｢何故人を殺さずに生きていけるんだ？不思議で堪らないよ。｣

"子供に必要なのは権力や財力では無い。"

"親だ。"

『…それはきっと"善の優しさ"を知っているんじゃない？』

｢…歪みと優しさを知ったらなんでも出来る？｣

『…君が次何て云うか分かっちゃったじゃないか…私は仕事が終わったからこれで失礼するよ。』

『"まだ死ぬなよ"』

私は扉をゆっくり閉めた。

『今日も来ちゃったな〜…加藤くん…高橋くん元気？』

『君達が居なくなって…心が凄く苦しかったんだ…凄くね…』

『他の人に私の陰口を云われて…最初に心配してくれたのは君達だったな。』

『誰かが私の為に心配してくれるのは怖かったけど…同時に嬉しかった。』

『何時帰ってるのかな…君達は…情が湧きすぎたじゃ無いか…』

お墓に掘られている文字を軽くなぞり、本を触る。

まるで昔の思ヰ出をもう一度体験するように_____。

『お父さん、お母さんの事…君達が調べてくれたんだね…』

溢れるはずの涙は乾き、あの日と変わらない情けない声が空に浮かび上がるように消えていった。

『懐かしい事思い出しちゃった…また会おう…最高の部下達。』

私は立ち上がり、ある所へと向かう_______________。

｢あれが特一級危険異能力者ね…素質は悪くないじゃん｣

一人の影が呪いの様に吐き捨てた。

私はある所へ向かう____ある町外れの危険区域。

それと共に芥川龍之介の任務区域である。

『芥川さん…大丈夫？酷い怪我だけど…』

｢ゲホッ…これく…らい僕にとってどうって事…無い…｣

『ん…手出して此の儘任務に行ったら傷がもっと開く。』

｢僕は『…ほら早く』ぐぬ…｣

『太宰さん…君にとって"救い"なのだろうね…』

｢当たり前だ…僕の命を救ってくれたのは太宰さんだ。｣

その声の最中___小さな足音が一人…聞こえた。

『…ほら終わったよ…任務に行きな。』

｢はい…有難う御座います。｣