第５６話 そのメイド、実演する。 ページ9
Broooock様のお部屋から出て廊下を歩く。窓の外は日が傾いて、少し暗い気がする。時計を確認したら、夕飯まで時間はあるけどもまだ少し時間はあった。微妙な空き時間、という具合かしら。
「あ、居た」
後ろから聞こえた声に振り返る。いつものように不快といわんばかりの表情で立っていたのは、きんとき様だった。挨拶をしようとスカートを摘まめば、毎回律儀にしなくて良いと止められる。礼儀は大事だとマムから習った身としては複雑だ。
「ちょっと聞きたいことがある。来て」
「かしこまりました」
三歩離れて後ろからついていく。最近はお会いしてないから思い当たる節が無い。もしくはさっきまでの事、かしら。
「入って」
「失礼いたします」
音を立てて閉められた彼の執務室で、きんとき様は椅子に腰かけ、私は向かい合って立っている。
「さっきまで何処に居た？」
「Broooock様の自室に居りました。陛下と、チーさまが証人でございます」
「先手打ってきたね。その件についてだ」
魔法は発動しなかったかと聞かれる。前以上に強く念じてかけたのだから、少しは異変があっても不思議じゃないと。
「なにも、起きませんでした。息が止まることも、声が出なくなることも」
「やっぱりか」
大きく息を吐いてから、目線がこっちに向けられる。きんとき様は、私をとてつもなく嫌っていたいらしい。
「あと、もう一つ」
「なんでございましょう」
「以前、庭のベンチで寝ていたBroooockを運んだだろ。お前の魔法は身体強化じゃないはずだ。しゃけの攻撃を受け止めたってのも聴いたし、何者なんだ？」
「私の魔法は、自分の影を自分の意志のままに操るものでございます」
「それがどういう理屈で、こうなってんだよ」
ふむ、と少し考える。実際に見て貰った方が早いのかしら。口頭説明だけでは限界がある。
「ご主人様、その万年筆をお借りしてもよろしいでしょうか？」
「え？いいけど」
手に載せた万年筆を持ち、手のひらに載せ、そのまま手を、裏返した。
「は、？」
「これは、私の手の影と万年筆の影をくっつけております。あの日はBroooock様の身体の影と私の影を重ねてお運びいたしました。シャークん様の件も同等でございます」
「マジかよ」
重ねた影は自分のものになる。大きさに関係なく、自分のものとして動かせる。ただそれだけだ。目の前のきんとき様は、未だ納得しているようには見えないが。
第５７話 その幹部、説明求む。→←第５５話 その幹部、眺め問う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 333人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ@端末垢 - にゃーちゃんさん» 初コメありがとうございます！夢主ネロちゃんが刺さってくださって嬉しいです！もうすぐ続編に進みますが、完結までお付き合いくださいませ〜〜！ (11月30日 14時) (
レス) id: 15e99861f0 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 初コメ失礼します！めためたに好き過ぎました…!!面白過ぎて、一気読みしてしまうくらいに好きです！夢主ちゃんがどストライク過ぎた…更新頑張って下さい。楽しみにしてます！ (11月29日 22時) (レス) @page44 id: fd6863f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
Ray(プロフ) - 紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ@端末垢さん» ええええっ？！この場をお借りして､読んで頂いてありがとうございます…！これからも更新お待ちしてます…！ (9月28日 23時) (レス) id: d88e598144 (このIDを非表示/違反報告)
紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ@端末垢 - Rayさん» コメントありがとうございます！ひょぇ、まさかの拝読してる作品の作者様がコメントくださるとは……!!!!有能だけどマイペースなネロちゃんをよろしくお願いします！ (9月28日 21時) (レス) id: 15e99861f0 (このIDを非表示/違反報告)
Ray(プロフ) - 有能メイドが好きなので何度も読み返してます。更新頑張って下さい…！ (9月28日 1時) (レス) id: d88e598144 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
