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話せたからといって、京本くんとの距離が近くなる、わけではない。
相変わらず関わることはなくて、今はクラスも遠いからそもそも顔すら合わせないし、
たまに廊下ですれ違っても向こうは6人で1セットだから声なんて掛けらんないし。
恋占いして、それを私に見られて恥ずかしがってた可愛い京本くんも、
隣に座って笑いかけてくれた京本くんも、
全部、全部夢だったんじゃないかって、思い始めた。
『 俺と花村さん、2人だけの秘密 』
血色のいい唇に細くて白い人差し指を当てて、またくい、と口角を上げた京本くん。
あれも…夢だったのかも。
「 あ、そうだきょも 」
「 ん？ 」
「 聞くまでもないと思うけど、頼まれたから一応 」
「 なーに 」
昼休み、購買に行ってクラスに戻る途中にゆっくり階段を上がっていると、たまたま聞こえてきた会話。
京本くんの名前。
もう片方は、恐らく6人組のうちの1人の田中樹くんだろう。
田中くんの声は廊下を通るとよく聞こえてくるから、関わった事なくても分かるぐらい聞き馴染みがある。
どうやら踊り場を曲がった先の階段に2人でたむろしているみたい。
…壁越し、盗み聞きしてるみたいになってるけど、通りにくいから、と理由をつけてみる。
「 俺のクラスの女子がきょもの連絡先欲しいって言ってるけど 」
「 誰？ 」
「 佐藤。去年きょもと同じクラスだったって 」
あぁ、佐藤さん。覚えてる。可愛くて目立ってた女の子。
もちろんクラスの中心グループに居て、田中くんにそんなお願いができるぐらい、ヒエラルキーが高い。
話すとか通り越して連絡先か、次元が違うな、なんて気分が沈んで、いやだから違うんだと慌てて首を振る。
私みたいなパッとしない子ですら覚えてる京本くんの中じゃ、上位に入るぐらい印象強いだろうなぁと思ってたら、
「 …誰だっけ 」
ってガチトーンの声。
「 ふは、マジ？佐藤のヤツ、隣の席になったこともあるって言ってたけど？ 」
「 ふーん…覚えてないや 」
…なに、それ。どういうこと。
いや、京本くん、隣の席だった私のこと覚えてたじゃん。
え…あれ？あれも夢？
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作者名：朔×紺
x他1人 | 作成日時：2021年9月18日 9時
