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放課後は図書室か本屋に寄るのが私の日常。今日は本屋まで行く元気無かったから、図書室。
盗み聞きした京本くんと田中くんの会話が忘れられなくて、昼からの授業が全く頭に入ってこなかった。
私の中で、都合のいい夢だった説が強まってしまったんだけど、それにしてはあの日の記憶が鮮明過ぎるなぁなんて。
( どっち…？全然分かんない、 )
夢じゃなかったとしたらそれはそれで、問題なんだ。
だってあんな可愛い子と隣だったことは覚えてないのに、私と隣だったことは覚えてるなんて、そんなの、可笑しいでしょ。
…そんな小さなことで、変に期待してしまう。折角、ずっと違うって言い聞かせてきたのに。
( あ、この本、懐かしい )
何気なく眺めていた本棚から見覚えのある背表紙を見つけて、そっと引き抜く。
私はわりとどのジャンルも読むタイプなんだけど、この小説は恋愛モノ。
もどかしくて胸がぎゅっとなるような話で、何周かしたぐらいお気に入りなんだよな。
白いマーガレットが描かれた表紙をゆっくりと撫でる。
そういえばこれ、恋占いの話だったっけ。
そんなことを考えながら捲った表紙の裏に、カード入れ。すっと引き出すと、並んでいる筆跡の違う名前達。
この貸出カード、まだ付いてたんだ。
今はバーコード読み取れば良いけど、昔は借りたらここに名前を書き込んでたんだよな。
「 …え、？ 」
借りた時に意味もなく書き込んだ、私の名前。そのすぐ下の欄が、何故か埋まっていた。
つまり、私より後にこの本を借りた人が書き込んでるわけなんだけど、
【 京本大我 】
少し左下がりの、とめはねはらいがしっかりした丁寧な字。震える指でその文字をなぞる。
京本くんが、この本を私の後に読んでる。何で、？
『 暇さえあれば本開いてたよね 』
私が何回も読んでるところ、見てたから、とか？
自意識過剰だとしても、こんなの、
「 …認めないとか、普通に無理 」
クラスが離れたから、これで彼のことを考えなくて済むと思ってた。全然そんなことはなかった。見かける度に、勝手にしんどくなってた。
…去年からずっと、今も、私は京本くんのことが好きだ。
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作者名：朔×紺
x他1人 | 作成日時：2021年9月18日 9時
