泡沫少女の泡沫ノ恋。【練紅覇】

第参夜・「大好き」 ページ5

呟いた途端、無性に悲しくなってきて･･･星空から目を背けた。

そばに置いてある鬼灯色の提灯が同情するように、

優しげに灯りを照らし続けている―


この提灯は、煌帝国のとある皇子がお祭りの際にくれた物。


その皇子は･･･笑顔がとても優しくて輝いていて･･･ ･･･可愛くて。

皇子といたときは、皇子が私の生きる支えとなっていた。

私にとって、優しい言葉を･･･励ましの言葉をくれた皇子は恩人だった。

そして、私が一番最初に心を打ち解けたのも、その皇子だった。



それに、私は皇子のことが･･･ ･･･



好きだった。

大好きだった。



なのに、もう一生会えることはできないかもしれない。

こんなにも、大好きなのに。･･･ ･･･愛しているのに。


言葉では表せられない程、好き。大好き。


皇子が私のことを、どう思っていようと大好きだった。


この想いは･･･ ･･･誰にも邪魔はさせない。

ただただ貴方を、想っておきたい。


私の想像の中で、皇子はまだ幼いまま。

･･･2人が幼い頃に離れ離れにさせられてしまったから。



貴方は今、どんなお姿なのでしょうか?

貴方は今、何方に恋煩いをしているのでしょうか?

貴方は今、私を覚えているのでしょうか･･･?



気になって、

気になって、

好きで 好きで たまらなくて･･･ ･･･



私はただ、病の苦しみに、恋の苦しみに

煌帝国の何処の最奥の部屋、開かずの間にて―

声を押し殺して泣くことしか出来なかった。



･･･この想いは届かないと分かっているから。


想いが届いたとしても、

すぐに私は病のせいで消えてしまうから。



でも、もう届かなくてもいいかもしれない。


「ただ、同じ空の下、何処かで貴方が笑っていてくれる･･･ ･･･それだけで私は幸せだから･･･」


溢れる涙を袖で抑えると、また声を押し殺した。


誰にも聞こえないように。

誰にも聞こえないように。


･･･ ･･･誰にもこの想いを悟られないように。



*



そんな時、小さな窓枠の方でカチャリという物音が聞こえた―

その物音は、あまりに小さすぎて

私の耳には届かなかった。


声を押し殺して泣くのに精一杯で。




･･･ ･･･ ･･･ ･･･ ･･･ ･･･ ･･･ ･･･ ･･･ ･･･

次回からsideが変わります!
やっと、やっとあの方が出てきますよ･･･!!

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