泡沫少女の泡沫ノ恋。【練紅覇】

第弐拾陸夜・「日記帳04―耐えられない―」 ページ28

『もう、耐えられなくなった。』


『王宮内を走り回って暴れた。言葉にならない言葉を思いっきり叫んで、泣き喚きながら。』



『母上と父上からは毎日のように嫌がらせのような手紙と、干からびた蛙のようなものや、

　腐った異臭のする物体が送られてくる。』


『本来、母上と父上が手紙を書く事など滅多にない。ほとんど側近に書かせている。

　―が、私への手紙はわざわざ母上と父上の直筆だった。』




『もう、耐えられない。』


『いろんな壁に体がぶち当たった。母上と父上につけられた切り傷などの傷が酷く痛んだ。』


『もう、自分で何をしているのかすら分からなくなった。』


『いっぱい、いっぱい迷惑かけちゃっただろうな。』



『私は最後、これで暴走をやめようって思って阿鼻叫喚の中―･･･

　小太刀のシュトラールが宿ってる方を両手で持ち、

　首に刺そうとした。


　その時


　誰かに小太刀を奪われた。



　驚いて、その【誰か】がいる方向へ顔を向けると―

　それは、紅覇だった。』



『紅覇は、辛そうな、辛そうな顔をして叫んだ。


「もう止めなよ!!!!!」って。

　私は何度も反抗した。


　私が死んでも誰も悲しむ人なんていないんだからって。

　紅覇には私の気持ち、分からないでしょ?!って。

　母上も父上も愛してくれない･･･私なんてこの世に必要ないって。

　生きる意味もない私なんていらないって。



　何度も何度も反抗した。

　体が、震えた。

　
　怖い。怖い。怖い。

　本当は、怖かった。

　死ぬことが。


　本当は、やっぱり･･･誰かに止めてもらいたかったんだと思う。』



『私は力の限り、ずっとずっと紅覇に叫んでた。反応した。

　紅覇もそれに応じて反論してきた。

　紅覇が言う「そんなことない」って言葉を。綺麗事を。何度も何度も何度も何度も何度も。』



『嫌だって叫んだ。そんな綺麗事は聞きたくないって。耳を塞いだ。

　本当は、そう言ってもらえて嬉しかったのに。

　自分の気持ち、隠した。 なんでかな?


　その時、紅覇はぎゅって私のこと、抱きしめた。


　初めて感じた、他人のぬくもり。

　すっごく暖かかった。ぽかぽかして･･･また、涙が出ちゃった。』



『紅覇は優しく微笑んで、

「Aは泣き虫だね」ってそう儚く笑うと

　もっと力強く、ぎゅうって抱きしめてきた。』



『嬉しかった･･･嬉しかった。

　他人のぬくもりに触れられて。』





　

第弐拾漆夜・「日記帳05―ぬくもり―」→←第弐拾伍夜・「日記帳03―両親―」

ラッキーカラー

あずきいろ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す