26 ページ26
しばらく声のする方へ歩き続ける。だんだん人が少なくなって、聞えてくる心の声も減ってきた。
その分聞き取りやすくなって、さらに声のする方へ進む。出久くんは、何も言わずに隣にいてくれた。
本当はもう既にキャパオーバーしてて、頭も痛いのだけれど、止まる訳には行かなくて。
──何も無ければ、それが一番いいんだけど。ただの迷子なら、1番平和。
私はエレベーターに乗って、ボタンを押した。
B2。
「地下駐車場……？」
「うん、ここから聞こえてきてる」
エレベーターが開けば、特有のじめりとした風が頬を撫でた。
集中して声を聞こうとして、直ぐに気づく。
「やだっ」
「うるせぇ！大人しくしろ！」
思わず顔を見合わせる。
「……出久くん！」
「うん、行こう！」
手を引かれて走り出す。
駐車場の端の方に、いた。
小さな女の子と、そのこの手を無理矢理に引く男。
私より先に、出久くんが声をかけた。
「あの！なにしてるんですか？！」
その声に、男がこちらを見た。
「なんだお前」
目を細めて、頬をボリボリと掻く。その姿はなんだか普通ではなくて、少し薄ら寒い何かを感じた。
「いや、見覚えがあるな……ああ、あの時のガキか」
「……？」
首を傾げる出久くん。
ただ、私には聞こえてきていた。男の心の声。
──あの時俺を告発したガキか
目が合って、男が口元に笑みを浮かべた。
気持ち悪い。素直にそう思う。鳥肌が立って、恐怖感で足がすくんだ。
でも、立ち止まる訳にはいかない。
「出久くん、その人、この間の痴漢の人だ」
「え？……本当だ。」
ぎゅっと拳を握りしめる。
「Aちゃん」
「うん、大丈夫」
名前を呼ばれただけだけれど、何を言いたいかなんだか分かってしまって、それがくすぐったかった。大丈夫、私には出久くんがついてる。
女の子が目にいっぱい涙を貯めてこちらを見てる。
──助けなきゃ
あの時出久くんが、私を助けてくれたみたいに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 77人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
人殺しとヒトゴロシ【僕のヒーローアカデミア】
無個性って馬鹿にされたから五条悟召喚したンゴwww2【MHA】【呪術廻戦】
【ヒロアカ】転生トリップしたから歌い手として人生エンジョイしようと思う。5
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
漱(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます！少し語感が悪かったので返させていただきました！デク君落ちの小説少ないですよね！更新頑張らせていただきます！ (2018年8月21日 23時) (
レス) id: a1b019c15f (このIDを非表示/違反報告)
みかん - あれ？題名代わりました？緑谷くん落ちの作品が少なかったので、ありがとうございます。これからも更新頑張ってください！楽しみにしてます！ (2018年8月21日 21時) (レス) id: 4c9134da1a (このIDを非表示/違反報告)
漱(プロフ) - みかんぽんずさん» コメントありがとうございます！とっても嬉しいです！更新頑張ります！ (2018年8月20日 16時) (レス) id: 7bc15f0ad8 (このIDを非表示/違反報告)
みかんぽんず - 序盤ですが、とっても素敵です…！緑谷くんと夢主ちゃんが今後どうなるのか、ドキドキです！（笑） (2018年8月20日 10時) (レス) id: ebb094bbec (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：漱 | 作成日時：2018年8月18日 20時
