陸拾肆 “〃 (11)” ページ22
慌てて出て行った二人を見送った首領はクルリと振り返り、共に出て行かなかった私を見て首を傾げた。
「おや、A君も行かなくて佳いのかい?」
『ええ。それよりも首領、警護の者は如何されたのですか?』
そう、何時も首領の後ろに控えている黒服の同僚達が今日は居なかったのだ。
別に抗争に出ているからという訳では無い。
「賢い君なら判るんじゃないかな?」
……黒服が居ない時、つまりそれは私と話をする時の合図だ。
今迄も私と話す時は必ず黒服は居なかった。
恐らく今回の件について私の集めた情報等を全て話せと云いたいのだろう……仕方が無い。
『太宰さんの件に関しましては、全て彼の計画通りに進んでいます』
「と云う事は矢張り態と捕まったんだね」
『はい。先程、話に出た顕微鏡の中には発信器を兼ねた通信装置が入っています。つまり太宰さんは白麒麟が態と罠に掛かる事を計算した上で、居場所を掴む為に此方も態と捕まったという訳です』
「ふむ……なら、もう一つの方は?」
『“白麒麟”、本名は澁澤龍彦。性別は男。身長177cm。この抗争に終止符を打つ為に政府が投入したようですが本人は政府の事など何とも思っておりません。異能力名は《ドラコニア・ルーム》。異能力者から異能力を奪い、異能に元の持ち主を襲わせる霧を発生。自身の異能力に殺された異能力者の異能力は結晶化して澁澤の元に集まります。目的に関しましては先日の宝石強盗事件の際では退屈凌ぎだと云っていました』
「そこ迄調べあげていたのなら何故云わなかった?」
ゾクリと背筋を冷たいものが走った。
そしてその正体が何なのかは直ぐに気が付いた。
殺気だ、首領から微量ではあるが殺気が出ていたのだった。
未だ先の話だが
此の人の殺気は尋常ではない、流石首領を務めるだけある。
ツーっと額に一筋嫌な汗が伝った。
『太宰さんに計画を遂行させるには、その情報は中也さんが顕微鏡のヒントを判ってから首領に話せとの命令でしたので』
「君は幹部候補である太宰君の命令と首領である私への報告の何方が如何に大切か判っているのかね」
『……申し訳御座いません』
私は頭を下げる事しか出来なかった。
一応頸を切られる覚悟はしている(勿論死ぬ訳にはいかないので異能を駆使して逃げるが)。
「……私はね、別に謝罪は求めていないのだよ。ほら、顔を上げなさい」
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黒龍(プロフ) - Mさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います^^ (2019年11月23日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
M - とてもおもしろかったです。 (2019年11月23日 1時) (レス) id: 5a0fa58d7d (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - りーこさん» 有難う御座います!頑張って続き書いていきますね (2019年6月24日 12時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
りーこ - 続きが楽しみです (2019年6月24日 6時) (レス) id: 140e75a81a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒龍 | 作成日時:2019年6月21日 21時