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陸拾参 “〃 (10)” ページ21

『龍頭抗争』開幕から87日目───。





「参ったね……実に好ましからざる事態だ」




本社楼閣最上階にある首領の執務室には首領、中也さん、広津さん、そして私が居た。


首領は眼下に広がる未だに抗争が続いている此の街を見乍ら憂鬱そうに呟いた。
その呟きに私を含む三人は何も云えず、唯手を後ろに組んだまま黙って聞いていた。




「通常の抗争なら、敵は多数の組織だ。その行動は危険だが数式化できる。予測し、操ることも不可能ではない。だが“白麒麟”は違う。何もかもが謎だ。異能も、目的も、その居場所さえも。霧か霞を相手に戦っているような気分だよ」




この抗争が始まってからポートマフィアや、その他組織を含む非合法組織構成員の目の下には薄らと隈が出来ている……寝る暇も無く唯々目の前の敵を殺し合う日々に早く終止符を打ちたいものだと誰もが思っているに違いない。


首領は手元の書類を見ては眉間に寄った皺を解す様に指で摘んでいた。
あの頭脳明晰な首領でさえ此処迄苦戦するとは、矢張りあの男は凄い人物だったのかも知れない…………出来れば、もう会いたくは無いが。




「マフィアを除く四大組織はほぼ壊滅。我々にしても、幹部から準幹部級の人間が何人も行方不明になっている。太宰君もその一人だ」


「太宰のポンツクはともかく、他の仲間を助けなくては」


「生きていれば、ね……広津さん。敵について、新たな情報は?」


「はい……末端の噂でしかありませんが、“白麒麟”の異能は奇怪にして異端だとか。何でも、戦った異能者は皆、その異能のあまりの強大さに絶望し、自ら命を絶つそうです」




その言葉を聞いた首領は重々しい溜息を吐いた。
そりゃあ、その噂を聞けば、異能者ならば誰でも溜息を吐きたくなる。




「……建物倒壊の時に行方不明になった太宰君が、何か残した情報は?」


「行方不明になる前に太宰殿が残した手掛かりはないか、三度調べました。ですが新しい情報は何も……何か新しい手掛かりを見つけたのか、新品の顕微鏡を購ったようですが、使われた形跡はありません」




顕微鏡という言葉に中也さんがピクリと反応する。漸く太宰さんの思惑に気付いてくれた様だ。




「何?顕微鏡だと?そいつは何処にある!」


「太宰殿の部屋に……」


「あのくそったれ!案内しろ!」

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黒龍(プロフ) - Mさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います^^ (2019年11月23日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
M - とてもおもしろかったです。 (2019年11月23日 1時) (レス) id: 5a0fa58d7d (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - りーこさん» 有難う御座います!頑張って続き書いていきますね (2019年6月24日 12時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
りーこ - 続きが楽しみです (2019年6月24日 6時) (レス) id: 140e75a81a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒龍 | 作成日時:2019年6月21日 21時

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