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陸拾伍 “〃 (12)” ページ23

(メートル)先に居た筈の首領が何時の間にか目の前に居て、私の頬に手を添えて顔を上げさせた。




「君は迚も優秀だ。誰よりも迅速に対応出来るし、誰も知らない様な情報を逸早く収集する事が出来る。勿論その他にも沢山、君の優秀な部分を挙げることが出来るよ」


『……そんな事』




ありません、と云おうとした私の言葉に被せる様に首領は又話し始めた。




「私は君を最下級構成員と云う立場では無く、私の補佐、或いは秘書として昇格させたいのだけども、如何だい?悪い話では無いと思うのだがね」


『私は……』




若し此処で本当に秘書兼補佐になってしまえば行動に制限が掛かり、思う様に動けなくなる。
……それに之はあくまで私の予測に過ぎないのだが、恐らく就任後の初めての仕事は殺しだ。


一応私は中也さんや同僚との手合わせで一度も敗けた事が無い、たったの一度もだ。
そのせいも有るのか、よく助言や対戦を求められる事が多い。


そう云えば、中也さんが興味は無いが入ったと云うあの若手会には中々の手練が五〜六人程居たと記憶している。
正直、今所有しているこの二つの異能が無ければ、私は為す術なく敗北していたと思う程の実力者揃いだった。
そして何故か彼等に気に入られてしまい、出会う度に色々と話しを持ち掛けられて困っている。


話が逸れたが、それに加えて私の仕事は主に死体処理だ。
そんな私が人一人殺せない事を首領は言葉にはしていないものの、認めてはいないだろう。




『私は、この立場が気に入っています。それに私の様な者が首領の補佐や秘書を務めるなど恐れ多くて出来ません』


「若し之が命令だと云っても?」




首領は懐から取り出した手術刃を私の首に当てた。
金属特有のヒヤリとした感覚があり、余程切れ味が善いのか接触部分に薄らと血が滲み出る。


それでも私は確りと目を合わせたまま、このままで善いです、と云いきった。



──少しの沈黙の後、首領は溜息を吐いて首元に当てていた手術刃を退けた。




「……君は意外と頑固者だね。仕方が無い、又勧誘させて貰うとしよう。さぁ行きなさい」




視線を街に戻した首領に私は一度御辞儀をしてから執務室を出たのだった。

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黒龍(プロフ) - Mさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います^^ (2019年11月23日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
M - とてもおもしろかったです。 (2019年11月23日 1時) (レス) id: 5a0fa58d7d (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - りーこさん» 有難う御座います!頑張って続き書いていきますね (2019年6月24日 12時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
りーこ - 続きが楽しみです (2019年6月24日 6時) (レス) id: 140e75a81a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒龍 | 作成日時:2019年6月21日 21時

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