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平『覚えとらんとはいえ、大切な家族やったんやろ。寂しくない訳がないわ。無理せんでええ。寂しかったら寂しいって言い。一度踏み込んだ仲や。拒んだりせえへん。』
『.......っ、』
それから私は声が枯れるんじゃないかってほどたくさん泣いて、平子副隊長は何も言わずにただただ受け止めてくれた。
平『....そろそろ帰ろか。日も暮れてきたわ。』
『はい.....』
平『そんな不安そうな顔せんでも大丈夫や。』
そう言ってまた、手を繋いで守るように私の一歩先を歩く平子副隊長。その後ろ姿がとても輝いて見えて、私はその影に埋もれないように平子副隊長の隣に並んで歩いた。
月『真子、おかえり。今こっちも丁度終わったところだよ。』
平『.....え、えらい派手にやったなぁ。』
隊長様の後ろに正座している義兄は見たことがないほど怯えきっていて、まるで大人に怒られた小さな子供みたいだと思ってしまった。
『私、ずっと蛙だったんですね。』
平『それはAちゃんだけやないと思うで?』
『えっ、?』
"ちなみに隊長様は何を....?"
と聞くと平子副隊長は
"知らんほうがええ"
そう言って苦い顔していた。さすがの私もそれ以上聞く勇気はなく、ただ小さく頷いた。
月『では私達もそろそろ帰るとしよう。天幕の警備を任せっきりにしてしまったからな。』
『あっ.....あの!
ありがとうございました!月影隊長、平子副隊長!』
帰路に着こうとした2人は振り返ると、優しい笑みを見せてくれた。寂しかった、寂しかったけどそれ以上にまだ自分でもよく分かっていない謎の感情に包まれていた。
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それからも、平子副隊長は度々様子を見に流魂街まで足を運んでくれていた。呼び方もAちゃんから"A"に変わっていろんな話をしてくれた。
義兄さんにもよほど効いたのか、あれから威圧的な態度はなくなって、あんなにも苦しくて怖かった家も何も感じなくなった。
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平『A、久しぶやな。』
『お久しぶりです。どうかなされたんですか?顔色、あまり良くないですけど....。』
平子副隊長が来られるのはひと月ぶりだった。そもそも護廷の副隊長として働かれる平子副隊長は多忙のはずだし、こうして会いに来てくださることだって申し訳ないくらい。
....でも、今日の平子副隊長は様子がおかしかった。今にも泣きそうな辛い顔をしていた。
平『事情があってな...もう、ここには来れそうにないねん。』
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作者名:とり天 | 作成日時:2023年8月15日 16時