▼ ページ27
.
千『ほら、出来たよ。』
『わぁ....ありがとうございます!』
射場副隊長はあっという間に髪をまとめ、私よりも綺麗に一つ結びに纏められていた。射場副隊長が使用されていた鬢付け油からほんのりとお花の香りもする。
『この鬢付け油とてもいい匂いです....なんの香りですか?』
千『胡蝶蘭さ。』
渡された手鏡で結び直された髪型を見ていると、隊舎の門から足音が聞こえてくる。鏡を置き、顔を上げると目的の人物の鳳橋隊長がこちらへと向かってくる。
鳳『Aどうかしたのかい?』
千『あんたを待ってたんだよ楼十郎。ったく.....急にあんたは姿を消すんだから毎回探すこっちの身にもなっておくれよ。』
鳳『あはは手厳しいな千鉄は.....。』
射場副隊長は私が預けていた書類を鳳橋隊長に渡すとその場で目を通し始める。時々眉をひそめた場面もあったもののすぐにいつもの鳳橋隊長に戻った。
鳳『ありがとう。たしかに受け取ったこと、伝えておいてもらってもいいかな。』
『はい!』
普段業務中は他の隊の方と話すことはあまりないため、隊長として鳳橋隊長と接するのは初めてだけど、いつもみたいな優しくて柔らかい雰囲気の中に確かに隊長としての存在感を感じる。
鳳『.....それにしてもA、その髪型千鉄に結んでもらったのかい?』
『はい。崩れていたことに気づかなくて、そしたら射場副隊長に整えてもらいました。』
鳳『似合ってるよとても。
.......、千鉄は手先が器用だからね。』
『.........?』
鳳橋隊長は何かに気づいた様子で話していたけど、それを聞いても首を小さく横に振られ"気にしないで"の一点張り。これ以上の長居は迷惑だと思い、お二人に改めて挨拶をして三番隊隊舎を後にした。
.
鳳『....千鉄にしては随分粋なことするじゃない。』
千『なんのことだか。ほらっあんたもボサッとしてないで仕事しな!また楽器取り上げるよ!』
鳳『そ、それは勘弁してくれないかなぁ.......。』
隊舎へと戻り書類の件を報告しようと隊首室へと向かうと、藍染副隊長の姿はなく入れ替わりの様に平子隊長の姿があった。何回も会っているはずなのに、真剣な表情で作業されている姿は未だに見慣れずそのまま見惚れてしまうほど。
よほど集中して私が入ってきたことに気づかなかったのか、顔を上げて目が合うと驚いた様子で平子隊長は目を見開いた。
.
368人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:とり天 | 作成日時:2023年8月15日 16時