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平『それになぁひよ里.....お前には言ったかもしれんけどAはAなりに考えて吹っ切れたんや。それがたとえ強がりやったとしても周りの俺らがとやかく言ったらAがかえって抱え込むだけやろ。』
猿『せやけど『人の話を最後まで聞けやっ。
Aは昔みたいに何も分からん子供やない。一人でもないねん。あいつのこと信用しとるんやったらAから頼ってくるんを大人しく待っとれ言うとるんや。』
平子隊長はどんな時でも私が欲しい言葉をくれた。
ぶっきらぼうな言葉でもそこには優しさが詰まっていた。
けど.......
『(もう、兄さんの話をするのはやめよう。平子隊長達に迷惑をかけてしまう。)』
だからこそ、その優しさに付け入っているような自分がどんどん嫌いになっていく。私は2人にバレないように静かにその場を立ち去って三番隊隊舎へと向かった。
猿『.....どこ見とんねん真子。』
平『今誰かおらんかったか?』
猿『お前とうとうハゲたんか....?』
平『喧しいわっ。』
気持ちを切り替えて三番隊隊舎へと到着すると、鳳橋隊長の姿はなく、隊舎の縁側に座る射場副隊長の姿。私に気づいたか立ち上がろうとした射場副隊長に声をかけ、少し駆け足で近づいた。
千『アンタは確か.....真子のとこの娘だったかい?』
『はい。五番隊三席の浦原Aです。
藍染副隊長に代わって書類届けに来たんですが....鳳橋隊長は?』
千『楼十郎はまた意味の分からない単語を並べてどこかに出かけたよ。今日中の仕事を終わらせたとはいえ、隊長としての自覚があんのかねぇ。』
『あはは.....。』
書類に目を通してもらうと"後で楼十郎にも確認させる"と言って預かってもらった。目的も果たしたので隊舎へ戻ろうとすると射場副隊長に引き止められ、振り返る。
千『これから急ぎの用はあるかい?』
『い、いえ....特には。』
千『ならここに座りな。髪を結い直してやるよ。』
さっき咄嗟に隠れた時に引っ掛けたのか、髪留めが緩んでいたのに指摘されて気づく。断るのも申し訳なく思い、遠慮気味に座ると慣れた手つきで髪を櫛で梳かしていく。
千『せっかく綺麗な髪をしてるんだ。勿体無い。』
『全く気づきませんでした......』
千『真面目なのも考えようだねぇ......』
気持ちよさにうたた寝しそうになると射場副隊長の柔らかい笑い声に、恥ずかしさのあまり背がピンと伸びる。
そんな私に耐えきれないように射場副隊長は今度は豪快に笑っていた。
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作者名:とり天 | 作成日時:2023年8月15日 16時