検索窓
今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:6,665 hit

3-10 ページ41

「悪魔は全員、元は天使だった」

 私はしばらく、黙って剣城の話を聞いていた。

 自分も含めた悪魔は皆、もともと天使に生まれたということ。神の意思に背くことで堕天し悪魔となり、今度は地獄の主に仕えるようになるということ。
 自分が悪魔になったのは、私が生まれる――というか、最初の人類が生まれるより前のことで、今日会った白竜とは天使時代の知り合いであると、剣城は話した。

「あまり驚いてないな」
「よくある設定だから……もっと驚いたほうがよかった?」
「いいや」

 “設定”の単語に剣城が少し笑ったのを見て、ほっとした。彩花に悪魔が近付いているかもしれないということになってから、彼はずっと張り詰めていたように思う。

「剣城はどうして悪魔になったの?」

 剣城は一度口を開いて、閉じた。カーテンの向こう、ずっと遠くを見つめて、一つ深呼吸をする。

「最初から、天使に向いてなかったんだ」

 以前、天馬の天使らしいところが苦手だと言っていたことを思い出す。天使は、「天国に行けるなら、死ぬのは悲しいことじゃない」と考えている。しかし、剣城はそうではなかった。

「剣城と同じように、人の死を悲しむ天使はいなかったの?」
「……知る限りでは一人だけ。俺の教育係だった」
「そっか。良かった」

 剣城が不思議そうな顔でこちらを見た。私の言葉の意味がわからないといった様子で、ぱちぱちと瞬きしている。

「剣城のことをわかってくれる人がいて良かったなって」

 そう言うと、剣城は珍しく眉を下げて、「そうだな」と笑った。

 彼は自身のことを「最初から天使に向いてなかった」と言っていたけれど、私に言わせてみれば悪魔っぽくもない。悪魔にしては真面目すぎるし、性格に邪悪さが足りない。天使や人間と一緒に映画を楽しむ悪魔がどこにいるんだか。
 私は剣城にバレないように、こっそり笑った。

3-11→←3-9



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (15 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
11人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:春間 | 作者ホームページ:https://twitter.com/April_hrm  
作成日時:2022年9月11日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。