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「悪魔は全員、元は天使だった」
私はしばらく、黙って剣城の話を聞いていた。
自分も含めた悪魔は皆、もともと天使に生まれたということ。神の意思に背くことで堕天し悪魔となり、今度は地獄の主に仕えるようになるということ。
自分が悪魔になったのは、私が生まれる――というか、最初の人類が生まれるより前のことで、今日会った白竜とは天使時代の知り合いであると、剣城は話した。
「あまり驚いてないな」
「よくある設定だから……もっと驚いたほうがよかった?」
「いいや」
“設定”の単語に剣城が少し笑ったのを見て、ほっとした。彩花に悪魔が近付いているかもしれないということになってから、彼はずっと張り詰めていたように思う。
「剣城はどうして悪魔になったの?」
剣城は一度口を開いて、閉じた。カーテンの向こう、ずっと遠くを見つめて、一つ深呼吸をする。
「最初から、天使に向いてなかったんだ」
以前、天馬の天使らしいところが苦手だと言っていたことを思い出す。天使は、「天国に行けるなら、死ぬのは悲しいことじゃない」と考えている。しかし、剣城はそうではなかった。
「剣城と同じように、人の死を悲しむ天使はいなかったの?」
「……知る限りでは一人だけ。俺の教育係だった」
「そっか。良かった」
剣城が不思議そうな顔でこちらを見た。私の言葉の意味がわからないといった様子で、ぱちぱちと瞬きしている。
「剣城のことをわかってくれる人がいて良かったなって」
そう言うと、剣城は珍しく眉を下げて、「そうだな」と笑った。
彼は自身のことを「最初から天使に向いてなかった」と言っていたけれど、私に言わせてみれば悪魔っぽくもない。悪魔にしては真面目すぎるし、性格に邪悪さが足りない。天使や人間と一緒に映画を楽しむ悪魔がどこにいるんだか。
私は剣城にバレないように、こっそり笑った。
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作者名:春間 | 作者ホームページ:https://twitter.com/April_hrm
作成日時:2022年9月11日 15時