【イナGO】迷える子羊を愛せよ上【天使と悪魔パロ】 (ページ38)

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　浮遊感に吐き気を催しつつ、剣城の腕を握りしめることで何とか耐える。

　私と剣城が降り立ったのは、とある駅前の広場だ。休日出勤と見えるサラリーマンや、大学生らしきグループが、街灯に照らされた道を通り過ぎていく。

「彩花！どこ！」
「A！」

　大きな声で名前を呼ぶと、彩花がこちらに向かって走ってきていた。少し先のベンチに座っていたらしい。
　近付いてみると、彼女は目を真っ赤に腫らしており、朝きちんとセットした髪も乱れている。何と声をかければいいのかわからずにいると、彩花は私を見て小首を傾げた。

「……ずいぶん早いね？」
「え？あー、それは……」

　悪魔に連れてきてもらったなんて言えるはずもない――そうだ剣城！彼と彩花を会わせるのはまずいのだった。慌てて辺りを見回したが、彼の姿はどこにも見当たらない。一時的に姿を隠しているらしい。
　ほっと胸を撫で下ろし、彩花に向き直った。

「タ、タクシー飛ばしてもらったの」
「そうなんだ。来てくれてありがとう」
「ううん。……ところで、沖内さんは？」
「先に帰ってもらった」
「そっか……」

　沖内さんと会ったのは本当に偶然で、私の勘違いだったのだろうか。光橋さんのことは残念だったが、悪魔のほうは何事もなく済んで一安心だ。

「あー、それじゃ、帰ろっか」
「うん」

　切符を買うために駅へ入ろうとすると、突然私の腕を誰かが掴んだ。