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剣城は大きなため息を吐き、書類を天馬に押し付けた。天馬はそれを受け取りながら「そんな!」と悲痛な声を上げる。
「人違いって?」
「ええっと、つまり――今日死ぬはずだったのは君じゃなくて、同姓同名の別の人だったってことだよ」
そう説明しながら、天馬は顔をひきつらせていた。
「今日死ぬはずだったのは君じゃない」という言葉が、耳の奥でこだまする。
私は倒れそうになりながら言った。
「ちょっと待ってください。それなら……私はどうなるんですか? 死んだまま?」
「それはない」
俯いたままの剣城がキッパリと言い放った。もともと白かった彼の顔は、もはや気の毒なほど青ざめている。
「お前は生き返る。……何もかも元通りに」
剣城の言葉に、どうやって、という疑問よりも、安堵が先走る。しかしながら、私のことを生き返らせることができるのに、二人の焦りようは一体。
「あの、二人はどうして――」
理由をたずねようとした瞬間、辺り一面が目を開けていられないほどの光に包まれ、私の意識は途切れた。
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作者名:春間 | 作者ホームページ:https://twitter.com/April_hrm
作成日時:2022年9月11日 15時