【イナGO】迷える子羊を愛せよ上【天使と悪魔パロ】 (ページ2)

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episode1 天使と悪魔

　床と壁の境目がわからないほど、真っ暗な空間だった。自分の姿すら見ることができない完全な暗がりに、私は一人立っていた。

「災難だったね、A」

　突然降ってきた声に驚き、辺りを見渡す。すると、「ここだよ」という声と共に、目の前に一人の青年が現れた。真っ白なローブに身を包んだ彼は私に微笑みかけた。

「もう心配いらないよ」

　くりっとした丸い目が優しげに細められる。否が応でも人を安心させる笑みに、緊張を解こうとしたそのとき、今度は地を這うような声が響いた。

「まだお前のものだと決まったわけじゃない」

　青年の隣、対照的な黒いローブを羽織った青年が、見ているだけでぞっとするような、冷ややかな目でこちらを睨んでいた。

「彼女は天国に行く資格がある」

　白いローブの彼は、むっとして黒いローブの彼に言った。すると、黒いローブの彼は負けじと言い返した。

「十分地獄行きだ」

　不穏な言葉と共にぴっと親指が向けられ、私は心底怯えた。わけのわからない場所に連れてこられたというのに、私に何の説明もなく話が進められている――こんなのは、あんまりだ。

「……あ、あの、すみません」

　二人はぴたりと言い合いを止め、同時に私に顔を向けた。予想より注目を集めてしまったことに戸惑いながら、私は努めて落ち着きながら言った。

「さっきから何の話をしているのかまったくわからないんですが……ここはどこなんです？あなたたちは？」

　たずねると、黒いローブの彼は片眉を上げて白いローブの彼を一瞥した。それを受けた白いローブの彼は、ひとつため息をついてから私に向き直った。

「俺は天馬。君を迎えに来た天使だよ。こっちは悪魔の――」
「剣城」
「ちょ、ちょっと待って！」
「何？」
「とても信じられないんですが」

　言うと、天馬と名乗った白いローブの彼が申し訳なさそうな顔をした。