Unanswered morning glowy(Daisuke.S) (ページ26)

今日:11 hit、昨日:66 hit、合計:42,683 hit

Unanswered morning glowy(Daisuke.S)２６ページ26

「…テレビの音とか、全然、聞こえなかったから…。」

ぎょっとしたAの表情に、思わず、佐久間はそう漏らした。
ぱっと浴びただけのシャワーを終えると
リビングからは何の音も聞こえてこなくて
一気に心臓が早鐘を打ち始める。
ここまで来て、Aが帰ってしまうとは思っていないが
不安に駆られて、急いで部屋着のTシャツとパンツを履いて、リビングへ走った。
ドアを開ければ、ソファに座ってスマホを開いているAがちょうど振り返ったところで、先程のセリフに戻る。

「だからって、、髪、乾かしてないよね、それ？」
「あ、うん。でも、俺、髪短いし
　放っておいても乾くし。」
「それは傷んでるからだよ…。」

Aに手招きをされて、ノロノロとそちらに向かうと
形だけ肩に引っ掛けていたバスタオルを取られたかと思うと
わしゃわしゃとバスタオルごと髪を揉まれて
自分のピンクの髪で一杯になった視界の先、Aの悪戯っぽく笑う瞳が見えた。

「乾かしてあげるから
　ドライヤー持ってきて？あと毛布も。」
「…うん！」

佐久間は弾かれるように返事をして
ドライヤーと毛布を取りに、また廊下を慌ただしく駆けた。

２人してラグに座り、Aは佐久間の髪を後ろから乾かす。
何度もブリーチした髪は、やはり傷みを隠せないようでパサパサしていたが
背中越しに見える、気持ち良さそうに目を閉じている佐久間の表情は
まさに犬のそれで。
某人よろしく、傷み切った髪をかき混ぜたくなるのを我慢する。
髪がしっかり乾いたのを確認すると、ドライヤーの電源を落として
そっとその髪を手櫛で整える。

「はい。終わり。」
「ありがと～。」

そう言って振り返ろうとした佐久間の肩に手を置いて
Aは、１度深呼吸した。

「A？」
「そのまま。聞いてくれる？」
「…顔見ちゃだめ？」
「多分、泣いちゃうからダメ。」
「………分かった。」

僅か、逡巡する間を置いて、佐久間が頷くのを確認してから
Aは佐久間に毛布をかけた。
それから、もう１度深呼吸をして、ゆっくりと話し始めた。